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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第五章/二/1 

1 仮出獄

 最近五年間の仮出獄の新受および決定の状況をみると,II-97表のとおりであって,新受および決定の人員が漸減しているにもかかわらず,決定人員中に占める棄却,不許可の割合が増加している。このように仮出獄を不相当と認められる者が増加していることは,刑務所の再入者など,更生を困難ならしめる諸条件をもった者がより多く審理の対象となり,これらの者に対する仮出獄の許否が慎重に検討されているためであろう。

II-97表 最近5年間の仮出獄の新受と決定の状況(昭和32〜36年)

 いま昭和三六年について,これを罪名別にみると,II-98表のとおり,特別法犯の棄却・不許可率は一六・五%で,刑法犯の一〇・二%に比べると,はるかに高率である。刑法犯で棄却・不許可率の高いのは,強盗強かんの三〇・六%,とばくの二二・二%,住居侵入の一七・八%,わいせつの一五・〇%をはじめとして,強盗致死傷,殺人,恐かつ,傷害,単純強盗,脅迫の順となり,逆に棄却・不許可率の低いものは,横領の四・三%,詐欺の五・七%,賍物および傷害致死の六・九%,強かんの七・三%をはじめとして,偽造,窃盗および放火の順となっている。概して,粗暴凶悪犯に対しては棄却・不許可率は高く,財産犯のそれは低い。

II-98表 罪名(行為)別の仮出獄決定状況(昭和36年)

 これを二三才以上と二三才末満の年齢別にみると,II-99表のとおりで,二三才以上の者が二三才未満の者より棄却,不許可率が高く,累年漸増の度も大きい。

II-99表 年齢別の仮出獄決定状況(昭和32〜36年)

 仮出獄処分の当否を判断するには,通常仮出獄の取消の有無が,一応判定の資料とされている。年度ごとに,仮出獄許可人員数と仮出獄取消人員数とを比較することは,右の目的のために必ずしも適当な方法とはいえないけれども,一応,従来の例にならってこれを表示すればII-100表のとおりで,取消率は,ほとんど四ないし五%にとどまっている。しかし取消率は正確に仮出獄中の再犯率を示すものではない。仮出獄期間中に犯罪を犯しても,なかには,仮出獄期間の経過等の事情により,仮出獄が取り消されるまでにいたらないものもあるからである。

II-100表 仮出獄許可人員・取消人員とその率(昭和32〜36年)

 なお,これを年齢別,罪名別にみればII-101表II-102表のとおり,年齢では二三才未満の取消率が二三才以上の二倍強であり,罪名では強盗がいちばん高く,なかでも強盗強かんが最高で,順に放火,住居侵入,道路交通取締に関する法令違反となっていることは注目に値する。

II-101表 年齢別仮出獄許可人員・取消人員とその率(昭和32〜36年)

II-102表 罪名(行為)別仮出獄取消状況(昭和36年)

 法務総合研究所において,さきに,昭和二八年に宇都宮,静岡,甲府の三刑務所から釈放された初入者二,二四四人について,五年間のなりゆきを調べたが,その八〇%に当たる一,九三三人の仮出獄者のうち,六三二人(仮出獄者の三二%)がその後,刑務所に再入しており,また仮出獄者の一四・六%は,再入の原因となった犯罪の犯行の日が仮出獄期間中であった。また,初犯,窃盗罪により東京拘置所へ収容された者で,昭和三六年度中に同所から出所した七五人について,その後八月間のなりゆきを調査したところ,仮出獄者五三人中八人が仮出獄期間経過後ではあるが,刑務所へ再収容されており,その再入率は一五・一%に達している。これは満期釈放者二二人の再入率一八・二%に比べ,やや低率ではあるが,仮釈放の運用と保護観察の実施に,なおいっそうの慎重さが必要であることを示唆するものといえよう。