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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第三章/二/3 

3 分類処遇

 受刑者は,分類調査の結果にもとづいて,それぞれ適切なグループ(級)に編入され,矯正のための処遇を受ける。このようなグループの編成は,処遇の専門化による矯正の効率化,すなわち,個々の受刑者の更生を容易にすることをねらったものであるから,当然施設の別異を前提としている。現状では,すでに触れたように,施設の設備その他の関係から,一部では混合処遇をやむをえず行なっているが,他面,最近の受刑者の傾向を反映して,新たなグループの編成が強調され,施設の分化が行なわれている点に目を向ける必要があろう。(法務省当局の「級別分類に関する構想」((昭和三七年))によれば,少なくとも,矯正の効果をあげるためには,二三種の級を必要とし,かりにやむをえず,二種の級を同一施設に収容するとしても,一六種の施設を分化することによって,はじめて分類収容の効果が期待できるとしている。)
 心身に疾患や故障があり,医療の対象となるH級およびK級についてみると,昭和三七年一〇月から,従来軽度の精神薄弱受刑者のみを収容していた岡崎刑務支所が,新施設の完成(定員三一四人)を機に,岡崎医療刑務支所となり,大阪,名古屋両管区内のH級のための総合的専門収容施設として発足したほか,昭和三七年四月から浦上刑務支所が福岡管内の老衰,虚弱者の収容を開始した(定員一〇〇人)ことが特記されよう。これらH級およびK級の昭和三七年末現在の収容人員は,次のとおりである。
八王子医療刑務所 H級(二六五人),K級(一一五人)
城野医療刑務所 H級(二四九人),K級(一一人)
菊池医療刑務支所 K級のうちらい患者(六人)
呉拘置支所 K級のうち老衰者(五八人)
岡崎医療刑務支所 H級(昭和三八年一月より収容開始予定)
浦上刑務支所 K級のうち老衰,虚弱者(七八人)
 これらの施設では,主として医療的な処遇を加え,その効果をあげているが,精神障害者の数は,II-71表に示すように,昭和三七年一二月二五日現在で七,四四三人(全収容者中の一四%)におよんでいるので,さらに医療施設の増設が必要である。

II-71表 受刑者の精神状況調べ(昭和37年12月25日現在)

 また,最近業務上過失致死傷による禁錮刑が増加したので,昭和三六年一〇月から,豊橋刑務支所に名古屋管内の該当者のうち,A級に属するもの(すなわちNA級)の分類収容を開始して効果をあげている(定員三〇人)。ここでは,懲役受刑者(A級)との分界を厳格にし,作業として,針金細工(労作程度中位)のほか,職業訓練として木工,謄写印刷,ラジオ組立を用意し,自発的な参加によって,将来の社会復帰への準備をすすめるよりにオリエンテーションを与えている。また,日常の処遇も,その基礎を,法規および人命を尊重する態度のかん養をねらった生活指導と厳格な生活訓練におき,事故反省会,死亡被害者慰霊祭,被害者に対する慰問文作成などの行事のほか,将来再び自動車を運転する機会のある者に対しては,交通関係法規講習会を実施し,さらに全員に対して,夜間,充実した情操かん養のためのクラブ活動を行なわせている。なお,東京管区でも,これらN級の集容とその特殊訓練について計画を進めている。
 青年層の処遇については,A級のうち,二五才未満のものをG級,二三才未満のもので,少年に準じて処遇すべきものをE級としているが,B級については,従来このような分類を行なっていない。しかし,少年院収容の経験を持つ青年の増加(II-61表(2)(3))は,ヤクザ,ぐれん隊等の関係者の増加とともに,B級刑務所における処遇困難者の増加をもたらしている。(処遇困難者のうち青年層の占める割合をみてもII-72表のとおり,G級やE級は,A級の二倍を越えているが,B級では,その平均をさらに上回ることが予想される。)

II-72表 受刑者の処遇難易調(分類級別)(昭和37年12月25日現在)

 また,分類処遇と関連して,分類級と再入率との関係をみると,II-73表のとおりであるが,これによると,A級(改善容易なもの)は,B級(改善困難なもの)に比して,はるかに再入率が低いこと,また,同じ改善容易と判定されたものでも年齢の若いE級やG級は,D級(少年)とともに,B級と同じ程度の再入率であること,心身に障害のあるものの再入率も高いことなどが注目される。

II-73表 分類級別出所者の再入率

 これらを総合して考慮するとき,B級における青年層の抽出とともに,D,G,E級にも通ずる青年層受刑者に対する,再犯防止のための積極的な特殊訓練の必要が痛感される。