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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第二章/三/1 

三 裁判の執行

1 死刑の執行

 死刑の言渡しを受けた者は,刑務所または拘置所内に拘置され,原則として判決確守後六月以内に,法務大臣の命令によって執行されることになっている。しかし,上訴権回復,再審等の請求,非常上告または恩赦の出願がなされたとき,および共同被告人の事件が係属中であるときは,これらの手続が終了するまでの期間は,この六月の期間に算入しないものとされ,さらに死刑囚が心神喪失または妊娠中であるときは,その状態がなくなるまで,死刑の執行は停止される(刑訴第四七五条,第四七九条)。
 死刑の執行に,刑務所または拘置所内の刑場で,絞首の方法で行なわれる(刑法第一一条,監獄法第七一条)。死刑執行に立ち会う者は,検察官,検察事務官および監獄の長またはその代理者とされており,刑場には,これらの者および執行にあたる刑務官のほかは,検察官または監獄の長の許可を受けた者でなければはいることはできない(刑訴第四七七条)。すなわち,死刑の執行は密行され,公開されることがない。このような死刑執行公開禁止の原則は,文明諸国の多くにごして,旧刑法によって法制化され現在に至っている。
 昭和三二年から昭和三七年までの五年間に死刑を執行された一四七人について,罪名別区分をみると,II-48表のとおりである。

II-48表 死刑執行人員(昭和32〜37年)

 すなわち,強盗致死,強盗殺人が大半で,総数の八三・七%を示し,一般の殺人がそれについで一三・六%となっている。そのほかは,尊属殺人と強盗強かん致死であるが,その数はいずれもわずかに二人である。わが国における死刑は,ごくかぎられた罪種について,慎重審理の上,言い渡されることはもちろんであるが,死刑判決の確定したのちも,前述のように再審等の請求,恩赦の出願あるいは執行停止事由の有無等をきわめて慎重に審議検討した上で執行されるので,通常,確定から執行までには相当な期間を要している。