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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第一章/七 

七 被疑者の年齢および犯時の身上

 昭和三六年に処理された事件(道交違反を除く〉の被疑者の受理時の年齢別,および同年中に起訴または起訴猶予処分に付された刑法犯・準刑法犯の被疑者の年齢別を示すと,II-20表のとおりである。

II-20表 被疑者年齢別百分比(昭和36年)

 まず処理総数についてみると,二五才未満のものが四四・〇%を占め,これに三〇才来満のものを加えると六一・七%に達する。これに対して,三〇才以上四〇才未満の者は一九・五%,四〇才以上五〇才未満の者は九・三%で年齢が高くなるに従って,その占める割合は減少している。
 起訴の年齢別区分をみると,二五才未満が三九・三%,二五才以上三〇才未満が二五・三%で,その合計は六四・六%に達している。
 起訴と起訴猶予との百分比をみて興味があるのは,少年を別として,三五才未満はほぼ同率であり,それ以下の年齢層は,いずれも起訴の率高く,それ以上の年齢層は,いずれも不起訴の率の方が高くなっていることである。このことからも,二〇才台には悪質犯が多いといいつるであろう。
 次に,昭和三六年に起訴または起訴猶予処分に付された刑法犯・準刑法犯の被疑者を,前科の有無によって区分するとII-21表のとおりである。起訴された者は,そのうちの四一・九%が前科者であり,五七・八%が初犯者であるが,起訴猶予処分をうけた者についてみると,前科者は二二・八%,初犯者が七三・七%となっており,起訴猶予となった者の方に,初犯者が非常に多いが,これは当然のことといえよう。

II-21表 刑法犯・準刑法犯の起訴・起訴猶予者前科調べ(昭和36年)

 次に,起訴された者について,初犯者,前科者に分けて年齢別に区分してみると,II-22表のとおりである。

II-22表 刑法犯・準刑法犯起訴者の年齢別初犯者・首科者別人員(昭和36年)

 二〇才未満の初犯者の率が九二・四%を示しているのは,少年は前に犯罪を犯したことがあっても,保護処分等に付され,刑事処分に付されることがきわめて少ないためである。前科者の占める割合の最も高いのは三〇才以上三五才未満の五二・一%で,その前後の年齢層がこれに続き,年齢が高くなるにつれて,前科者の率は減少している。なお,二〇才以上二五才未満の前科者の率が低いのは,少年時の犯罪は刑事処分に付されることが少ないことに影響されているものと思われる。
 次に,前科者の前科の内容についてみるとII-23表のとおりである。まず起訴と起訴猶予の合計についてみると,前科者の五三・〇%が罰金の前科であって,懲役・禁錮の実刑を受けたことのある者は三二・九%にすぎない。起訴された者と起訴猶予になった者とを比較してみると,罰金前科者については,ほとんど差がなく,懲役・禁錮の実刑前科者が起訴の方に多く,逆に執行猶予者は起訴猶予の方に高い比率を占めているが,これは実刑前科のある者が,多く起訴さることからみて当然であろう。実刑の前科がありながら,起訴猶予処分に付された者が相当あるが,これは前科と罪質をことにするとか,あるいはその前科が古いものであるなどの事情のある場合であろう。いずれにせよ,起訴猶予処分に付された者の総数一六六,〇六四人と対比すると,実刑前科がありながら起訴猶予となったものは,七・〇%にすぎず,特に注目すべきこととはいえないであろう。

II-23表 刑法犯・準刑法犯の起訴・起訴猶予者前科内容調べ(昭和36年)

 次に刑法犯・準刑法犯の起訴・起訴猶予者について,刑の執行猶予中のもの,仮出獄中のもの等,被疑者の特殊な身上別の区分を示すと,II-24表のとおりである。この表によって明らかなように,刑の執行猶予中の者が圧倒的に多く,おおむね,仮出獄中,保釈中,刑の執行停止中,勾留執行停止中の順序に減少している。起訴と起訴猶予との合計数に対する起訴の割合は,昭和三六年では保釈中が最も高く八八・四%で,次は仮出獄中の八六・〇%,以下執行猶予中の七七・一%,勾留執行停止中の六〇・〇%,刑の執行停止中の五〇・〇%となっている。これらの特殊な身上をもっている者の起訴される率は,他の一般の者に比し,非常に高いことがわかるが,最近三か年間ではその実数はいずれも減少しており,好ましい傾向といわなければならない。

II-24表 刑法犯・準刑法犯,起訴・起訴猶予者の犯時の身上別人員(昭和34〜年36)