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 昭和38年版 犯罪白書 第一編/第二章/二/1 

二 刑法犯の罪種別の傾向

1 序説

 最近における刑法犯の動きとその特色を考察するため,昭和三一年以降の検挙人員について罪種別の統計表を作成すると,I-8表のとおりであって,これをグラフにしたのI-9図である。罪種別の分類は,概括的に(1)財産犯罪(窃盗,詐欺,横領,賍物,背任)(2)暴力犯罪(殺人,傷害,暴力,脅迫,逮捕監禁,公務執行妨害,強盗,恐かつ,建造物損壊,毀棄等)(3)性犯罪(強かん,わいせつ行為,わいせつ物,重婚等)(4)過失犯(過失致死傷,失火)(5)その他の五つのグループとした。
 強盗と恐かつは暴力犯罪であるとともに財産犯罪としての性質も有するが,前者の性質の方が強いと考えられるで,暴力犯罪のグループに加えた。次に強かんは暴力犯罪の一種ではあるが,性犯罪の代表的のものであるため,後者のグループに加えた。なお,性犯罪のうちわいせつ行為は,強制わいせつと公然わいせつに分けられるが,前者が大部分であるから,性犯罪のうちの大部分は暴力犯罪またはこれに近い性質を有するものであるということができる。

I-8表 刑法犯主要罪種別検挙人員(昭和27,31〜36年)

I-9図 刑法犯主要罪種別検挙人員(昭和27,32〜36年)

 この統計表には,最近の犯罪の動きと比較するため,昭和三六年から一〇年前にあたる昭和二七年の統計を掲載した。ただここで注意を要することは,昭和二六年と昭和三一年以降とでは警察庁の統計作成方法に変更がなされていることである。すなわち三一年以降は一四才未満者のみによる触法行為数が計上されていないため,昭和三〇年以前の統計数字とはその条件をことにする。このような関係があるため以下の説明においては,主として昭和三一年以後の統計を使用し,必要に応じてそれ以前の統計も掲載することとした。
 I-8表およびI-9図によって明らかなとおり,最近の犯罪現象における最も大きな特色は,財産犯罪が減少し,暴力犯罪,性犯罪および過失犯が増加したことである。以下項を改めて各罪種別に,主要犯罪の推移について考察してみよう。ただし過失犯は,その大部分が過失致死傷であって,そのほとんどが道路交通関係の業務上過失致死傷であるから,その説明は第二章三にゆずることとする。(なお,各種犯罪の昭和初年から三三年までの概況については,犯罪白書・昭和三五年版・二四頁以下参照)。