平成１０年版　犯罪白書第3編/第4章/第4節

　少年鑑別所に収容された少年について,総数,凶悪事犯少年及び薬物事犯少年の特質をまとめると,次のとおりである。
①　年齢層については,鑑別所収容少年総数では,男子は年長少年,女子は中間少年が最も多いが,この10年間の推移では,男子は中間少年,女子は年長少年の比率が,それぞれ上昇している。また,凶悪事犯少年のうち,殺人事犯少年は年長少年,強盗事犯少年は中間少年が,それぞれ最も多い。
　さらに,薬物事犯少年では,覚せい剤少年は男女とも年長少年が圧倒的に多いが,毒劇物少年は総数と同様に,男子は年長少年,女子は中間少年が,それぞれ最も多くなっている。
②　少年鑑別所への入所回数については,鑑別所収容少年総数,凶悪事犯少年,薬物事犯少年のすべてにおいて,この10年間初回の者の比率が上昇している。
③　職業等については,男子は有職,女子は無職が最も多い。凶悪事犯少年では,学生・生徒の比率が,総数及び薬物事犯少年と比べて高くなっている。特に,強盗事犯少年では,無職が40.8%,有職が33.1%,学生・生徒が25.8%であり,高校生が21.9%となっている。
④　教育程度については,この10年間を累計すると,男女共に中学卒業が最も多いが,この10年間では,高校中退の比率が上昇している。凶悪事犯少年では,高校在学,高校卒業以上の者の比率が総数と比べて高くなっている。
⑤　非行の動機については,殺人事犯少年は「かっとなって」,強盗事犯少年は「お金や物が欲しくて」が最も多いが,後者では「誘われて,その気になって」の比率が近年上昇している。薬物事犯では,覚せい剤少年が「好奇心」,毒劇物少年が「うさ晴らし」が,それぞれ最も多い。
⑥　非行時の共犯関係については,凶悪事犯では,殺人事犯少年ほ単独が約65%であるのに対し,強盗事犯少年は単独がわずか13.0%で,共犯者数5人以上の比率が28.3%と最も高く,しかもその比率は,この10年間でおおむね上昇している。
　薬物事犯少年でほ,男子は単独,女子は共犯者数2人が,それぞれ最も多い。共犯者との関係については,覚せい剤少年女子の愛人を除いて,いずれも地域仲間が最も多くなっている。
⑦　少年鑑別所入所以前の問題行動については,総数,凶悪事犯少年,薬物事犯少年共に,その経験者が7割を超えるのは,酒,たばこ,性経験である。さらに,覚せい剤少年では,毒劇物使用経験が男女共に7割を超えているが,近年,毒劇物使用経験なしに覚せい剤を使用する者が増えている。
⑧　不良集団に所属したことのない者は,総数では男子が4割,女子が5割を,それぞれ超えているが,凶悪事犯では,殺人事犯少年で6割,強盗事犯少年で5割を超え,薬物事犯では,覚せい剤少年の男子が5割,女子が7割となっている。また,毒劇物少年の男子は4割,女子は5割を,それぞれ超えている。一方,不良集団に所属している者の所属不良集団は,殺人事犯少年の暴走族を除いて,いずれも地域不良集団が最も多くなっている。
⑨　在宅保護歴については,凶悪事犯少年では,在宅保護歴のない者の比率が,総数及び薬物事犯少年よりも高くなっている。この10年間では,全体的に在宅保護歴のない者の比率がおおむね上昇している。
　保護施設歴については,保護施設歴のない者の比率が全体的に上昇している。
⑩保護者が実父母である比率は,男子が女子を上回るが,この10年間男女共に上昇している。また,保護者の生活程度は,中以上の比率が上昇している。
　親の養育態度は,この10年間を累計すると,両親共に放任が最も多いが,強盗事犯少年では母の養育態度は普通が最も多い。この10年間では,放任の比率の低下と普通の比率の上昇がみられる。
　親への態度については,男子は親和・信頼,女子は両価が最も多いが,強盗事犯少年では,親和・信頼の程度が高くなっている。また,覚せい剤少年の女子は,母に対して親和・信頼が最も多くなっている。
　現在の家族の問題については,問題を抱えている者は女子の方が多い。問題のない者の比率はこの10年間上昇し,問題の中では,指導力欠如,交流不足の比率が上昇している。殺人事犯少年には,かなり深刻な家族の問題を抱えた者と問題のない者との双方がいる。