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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第4章/第2節/4 

4 家庭

(1) 保護者

 最近10年間を累計して凶悪事犯少年の保護者について見ると,実父母率は殺人事犯少年で55.3%,強盗事犯少年で59.4%であり,共に鑑別所収容少年総数(54.2%)を上回っており,特に,強盗事犯少年でやや高くなっている。
 なお,特別調査により,最近3年間の殺人事犯少年の実父母率を見ると,59.8%となっており,家族と同居している者は72.6%に達している。家庭内が不和であったり,親が離婚している者は,47.0%である。
 保護者の生活程度が中以上である者は,殺人事犯少年では78.2%と鑑別所収容少年総数(82.8%)より低いが,強盗事犯少年では86.7%と高くなっている。

(2) 養育態度

 III-74図は,最近10年間を累計して凶悪事犯少年の親の養育態度を見たものである。

III-74図 凶悪事犯少年の親の養育態度別構成比(昭和63年〜平成9年の累計)

 殺人事犯少年,強盗事犯少年とも父の養育態度は,放任が最も多く,次いで,普通,厳格,一貫性なしの順となっているが,強盗事犯少年では普通の比率が殺人事犯少年より高くなっている。母の養育態度は,殺人事犯少年では放任,普通,溺愛,一貫性なしの順,強盗事犯少年では普通,放任,溺愛,一貫性なしの順となっている。鑑別所収容少年総数と比べて,父母共に,殺人事犯少年では,溺愛の比率がやや高くなっており,強盗事犯少年では普通の比率が高く,放任,一貫性なしの各比率が低くなっている。

(3) 親への態度

 III-75図は,最近10年間を累計して凶悪事犯少年の親への態度を見たものである。

III-75図 凶悪事犯少年の親への態度別構成比(昭和63年〜平成9年の累計)

 父に対しては殺人事犯少年,強盗事犯少年共に,親和・信頼が最も多も次いで,両価,無関心の順となっているが,さらに,殺人事犯少年では拒否,依存が,強盗事犯少年では依存,拒否が,それぞれこれに続いている、
 母に対しては殺人事犯少年,強盗事犯少年共に,親和・信頼が最も多く,次いで,殺人事犯少年では両価,依存,無関心,拒否の順,強盗事犯少年では依存,両価,無関心,拒否の順となっている。
 鑑別所収容少年総数と比べて,父母に対し,殺人事犯少年では,親和・信頼,依存が低い一方,無関心,拒否,攻撃・反抗,対等・友人が高くなっているのに対し,強盗事犯少年では,親和・信頼が高くなっており,強盗事犯少年において,父母双方に対する親和・信頼という好感情が高くなっていることが分かる。

(4) 現在の家族の問題

 III-23表は,最近10年間を累計して凶悪事犯少年の家族の問題について見たものである。

III-23表 凶悪事犯少年の現在の家族の問題(昭和63年〜平成9年の累計)

 指導力欠如,しつけ不足,離婚では,強盗事犯少年が,それ以外の項目では,殺人事犯少年が,それぞれ高い比率を占めている。
 鑑別所収容少年総数と比べると,凶悪事犯少年では,問題なしと判断された者の比率が高くなっている。さらに,鑑別所収容少年総数と比べて,強盗事犯少年では,ほとんどの項目で低い比率となっているが,殺人事犯少年では,交流不足,父母間葛藤,父母のしつけの不一致,崩壊・離散,家族間不和,経済的困窮において高い比率となっている。殺人事犯少年では,かなり深刻な家族の問題を抱えた者と問題のない者との双方が存在していることがうかがわれる。