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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第4章/第2節/3 

3 非行歴

(1) 問題行動歴

 最近10年間を累計して凶悪事犯少年の問題行動歴を見ると,経験者が7割以上の高い比率を示すのは,殺人事犯少年,強盗事犯少年共に,たばこ(それぞれ82.2%,93.9%),酒(同73,9%,83.8%),性経験(同71.0%,75.6%)であるが,いずれも強盗事犯少年の方が比率は高くなっている。殺人事犯少年の方が比率の高いのは,覚せい剤(殺人事犯少年が5.1%,強盗事犯少年が2.8%),文身(同13.1%,9.4%)であり,これは,一部の殺人事犯少年における暴力団とのりながりを示唆すると思われる。
 なお,特別調査により,最近3年間における殺人事犯少年の薬物濫用等経験者の比率を年次別に見たものがIII-73図である。

III-73図 殺人事犯少年の薬物濫用等の経験(平成7年〜9年)

 いじめの被害経験者は,いずれの年次においても4割を超え,薬物濫用経験者は,各年次とも25%前後である。また,いじめの加害経験者の比率は,この3年間で上昇し,方,家庭内暴力経験者の比率は低下している。

(2) 非行初発年齢

 最近10年間を累計して凶悪事犯少年の非行初発年齢を見ると,殺人事犯少年では,15歳(20.0%)が最も多く,次いで,14歳(18.0%),16歳(14.3%),18歳(9.8%),13歳・17歳(共に8.8%),19歳(5,9%)の順となっており,本件が初発であるのは2.2%である。強盗事犯少年では,同じく15歳(22.5%)が最も多く,次いで,14歳(21.8%),16歳(15.4%),13歳(11,2%),11歳以下(6.3%)の順となっている。
 14歳から16歳までの三年齢で,殺人事犯少年は52.2%,強盗事犯少年は59.7%と共に5割を超えるものの,強盗事犯少年の方が殺人事犯少年よりも早くから非行を行っている者の比率が高いといえる。

(3) 不良集団所属

 最近10年間を累計して凶悪事犯少年の不良集団所属について見ると,殺人事犯少年では,不良集団に所属したことのない者が62.9%を占めているが,所属している者の所属不良集団については,暴走族(13.7%)が最も多く,次いで,暴力団(10.8%),地域不良集団(7.6%)の順となっている。
 強盗事犯少年では,不良集団に所属したことのない者が51.0%を占め,殺人事犯少年より低い比率となっている。一方,所属している者の所属不良集団については,地域不良集団(28.6%)が最も多く,暴走族(12.2%)がこれに次いでいる。また,暴力団(2.6%)は,殺人事犯少年より低い比率となっている。

(4) 在宅保護歴

 III-21表は,凶悪事犯少年の在宅保護歴を,昭和63年,平成4年,8年及び9年について見たものである。

III-21表 凶悪事犯少年の在宅保護歴(昭和63年〜平成9年)

 在宅保護歴のない者の比率は,殺人事犯少年,強盗事犯少年共に上昇する傾向にあるものの,平成9年には前年より低下している。保護観察(一般)の該当者は,殺人事犯少年,強盗事犯少年共におおむね低下傾向にある、殺人事犯少年は,強盗事犯少年と比べて在宅保護歴のない者の比率が高く,また,保護観察(一般)の該当者の比率が低くなっている。

(5) 保護施設歴

 III-22表は,最近10年間の凶悪事犯少年の保護施設歴を,昭和63年,平成4年,9年及び9年について見たものである。

III-22表 凶悪事犯少年の保護施設歴(昭和63年〜平成9年)

 保護施設歴のない者は,殺人事犯少年,強盗事犯少年共に,各年次において,おおむね80%以上の高い比率を占めている。
 各保護施設歴の該当者については,強盗事犯少年の方が殺人事犯少年よりもおおむね高い比率となっているものの,昭和63年から平成9年にかけて低下傾向にある。
 なお,最近10年間を累計して凶悪事犯少年の保護施設歴について見ると,殺人事犯少年で該当者の比率が高いのは,中等少年院(長期)(4.1%),初等少年院(長期)(3.1%),教護院(2.9%)であり,その他はいずれも2%未満となっている。強盗事犯少年では,中等少年院(長期)(4.1%),教護院(3.7%),初等少年院(長期)(2.6%),中等少年院(一般短期)(2.0%)であり,その他ほいずれも2%未満にとどまっている。