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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/5 

5 いじめと非行

 昨今,児童生徒のいじめが依然として問題となっており,いじめが関係したと考えられる自殺が発生するなど,憂慮すべき状況にある。
 文部省初等中等教育局の資料によれば,平成8年度(会計年度)におけるいじめの態様において,最も件数の多かったものは,ひやかし・からかい(1万9360件,総数の27.8%)であり,次いで,言葉での脅し(1万2050件、同17.3%),暴力(1万1426件,同16.4%),仲間はずれ(1万1319件,同16,3%)の順となっており,一口にいじめといってもその態様は様々で,必ずしもすべてが刑事司法手続の対象とされるわけではない。また,行為の性質上、実態を摺握しにくいのが実状である。
 III-22図は,昭和59年以降のいじめに起因する事件の推移を見たものである。件数,補導人員共に,昭和60年の638件,1950人をピークに,長期的にほおおむね減少・低下しており,平成9年には,それぞれ93件(前年比42.6%減),310人(同27.2%減)となっている。

III-22図 いじめに起因する事件の推移(昭和59牢〜平成9年)

 いじめは単に加害者側が加える攻撃の問題にとどまらず,攻撃される側,すなわち被害少年が,いじめに対する仕返しとして,殺人,傷害等を犯したり,自殺をするなどの事例も見られる。平成9年の事件総数93件のうち,2件がいじめの仕返しによる事件である。
 法務省では,平成6年に,子どもの人権問題を専門的に取り扱う「子どもの人権専門委員(子ども人権オンブズマン)」制度を設け,10年6月現在,計685人の専用委員を全国の法務局・地方法務局に配置し,いじめに悩む人々に対する相談活動を行い,いじめ解消のための適切な処置を講じている。