2 刑法犯の動向 昭和20年代から30年代の犯罪動向を概観すると,交通関係業過(昭和40年以前は業過)を除く刑法犯(以下,本編では特に断りのない限り「刑法犯」という。)の認知件数は,23年及び24年には約160万件に達したが,26年以降40年までは,おおむね130万件台後半で推移した。刑法犯の発生率(認知件数の人口10万人当たりの比率をいう。)は,23年には戦後で最高の2,000を記録したが,その後は低下し,30年代はおおむね1,400台で推移し,また,検挙率は,20年代半ばまでは50%台で,20年代後半から30年代はおおむね60%台で推移した。 刑法犯の認知件数について,罪名別構成比を見ると,戦後一貫して構成比第一位を窃盗が占めているが,昭和20年代にはこれがおおむね70%以上であった。 刑法犯の罪名別動向を見ると,殺人の認知件数は,昭和20年代前半に急増し,24年から30年までの間は,その後において記録したことのない,2,700件台以上の極めて高い水準で推移し,29年には3,081件と最大のピークを迎えている。30年代に入ってからは,おおむね減少傾向を示し,2,200件台から2,600件台の間で推移した。 強盗の認知件数は,昭和21年,22年と9,000件台を記録した上,23年には1万854件のピークを迎えた。しかし,その後は減少し,30年代末には4,000件を下回ることとなる。また,強盗のうちでも特に凶悪な強盗致死の認知件数は,平成に入ってからは多い年でも40件台であるものが,昭和21年から25年までの間は,年々減少しながらも,350件台から230件台という極めて高い数値を記緑し続けた。 粗暴犯の傷害,脅迫及び恐喝は,いずれも認知件数が昭和30年代に戦後最大のピークを迎え,その後は,今日まで,長期的に減少している。 財産犯では,窃盗の認知件数が,昭和23年に約124万6,000件のピークに達した後減少し,25年以降30年代末までの間は,おおむね100万件前後で推移している。詐欺,横領,背任及び盗品譲受け等も20年代半ばに戦後の最高数値を記録し,20年代後半には急減し,30年代以降は漸減傾向を示している(ただし,横領については,40年代後半以降,遺失物等横領の増加に伴い,20年代半ばのピーク時の数値が更新されている。)。 その他,特筆すべき動向としては,強姦の認知件数が,昭和20年代前半に急増した上,二人以上の者が現場で共同して犯した強姦が非親告罪とされた33年においては,前年比で約45%の激増現象が見受けられることを挙げることができる。
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