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 平成 9年版 犯罪白書 第3編/第1章/第1節/1 

第3編 まとめ

第1章 憲法施行50年の犯罪動向

第1節 混乱と復興の時代(昭和20年代から30年代)

1 概  況

 昭和20年代半ばまで続いた戦後の社会的混乱と経済的困窮は,我が国の歴史上かつて経験したことがないほど,凶悪犯や財産犯などの犯罪を増加させた。30年代に入り,社会全般が落ち着きを取り戻し,もはや戦後ではないといわれるようになってからも,犯罪は,20年代後半と比較して,必ずしも減少傾向を見せなかったばかりでなく,その質においても凶悪化し,特に,青少年犯罪は増加傾向が顕著であった。
 暴力団関係者を中心とする暴力犯罪が大きな問題とされたのもこの時期である。昭和30年代,暴力団勢力の検挙人員が刑法犯を中心に5万人以上の高い数値で推移し,多くの抗争事件が続発し,暴力団勢力の刑法犯検挙人員の約半数を暴行,傷害及び殺人によるものが占めていた。暴力追放の世論の盛り上がりを背景に,39年から40年にかけて警察の暴力団に対する集中取締り,いわゆる頂上作戦が実施されてもいる。
 また,昭和30年代には,選挙犯罪,麻薬犯罪及び交通犯罪の増加が世間の関心を集め,少年犯罪が第二のピークを迎えている。
 なお,昭和20年代から30年代にかけて刑罰法規が数多く整備されている。刑法については,22年11月に,憲法制定の趣旨に適合するように一部改正がなされたほか,30年代末までの間に,5回の一部改正がなされている。戦後のインフレーションが急激に進むなか,23年12月には,罰金等臨時措置法が公布された。33年の刑法一部改正及び39年の暴力行為等処罰ニ関スル法律の一部改正は,当時問題とされていた暴力犯罪に対処するためのものでもあった。