前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第6章/第2節/1 

第2節 仮釈放

1 概  説

(1) 仮釈放の種類
 仮釈放とは,矯正施設に収容されている者を収容期間の満了前に一定の条件の下に釈放して更生の機会を与え,円滑な社会復帰を図ろうとする制度の総称である。
 仮釈放には,次の4種類がある。
 [1] 懲役又は禁錮の受刑者に対する仮出獄
 [2] 拘留受刑者又は労役場留置者に対する仮出場
 [3] 少年院の在院者に対する仮退院
 [4] 婦人補導院の在院者に対する仮退院
 刑法28条及び30条は「行政官庁の処分」によって仮出獄及び仮出場を許すことができると定めているが,犯罪者予防更生法の施行前においては,この権限は,司法大臣(昭和23年2月以降は法務総裁)に属していた。そして,仮出獄又は仮出場の具申は典獄が行い,仮出獄を許された者は,警察官署等の監督(少年については少年保護司の観察)を受けることとされていた。
 しかし,昭和24年7月に犯罪者予防更生法が施行され,仮釈放の許否の決定は,成人及び少年の各地方保護委員会(27年に地方更生保護委員会に統合)の権限に属することとなり,また,仮出獄及び少年院在院者の仮退院は,釈放後の保護観察と結び付くことで対象者の改善更生を図るための措置として行われることが明確化された。また,犯罪者予防更生法施行法(昭和24年法律第143号)により,警察官署等による仮出獄者の監督制度は廃止された。
(2) 仮釈放の審理
 仮釈放の許否を決定する地方更生保護委員会(以下「地方委員会」という。)は,委員3人で構成する合議体でその権限を行使する。地方委員会は,自らの職権,又は矯正施設の長からの申請に基づいて,仮釈放の審理を開始する。その場合,指名した委員(以下「主査委員」という。)に審理を行わせる。主査委員は,原則として矯正施設に出向いて,被収容者本人と面接し,[1]仮釈放の適否,[2]仮釈放の時期,[3]仮釈放の期間中守らなければならない特別遵守事項等について審理する。そして,この結果に基づき,合議体で評議の上,仮釈放の許否等を決定する。平成8年に主査委員が自ら面接を行った矯正施設被収容者は1万4,244人(受刑者1万2,156人,少年院在院者2,088人)である(法務省保護局の資料による。)。
 以下,本節では,仮出獄を中心に仮釈放の状況について概観していくこととする(少年院からの仮退院については,本編第7章第3節1参照。)。
(3) 仮出獄の要件
 仮出獄は,懲役又は禁錮の受刑者に改悛の状があるとき,次の法定期間が経過した後,許可される。
 [1] 有期刑については刑期の3分の1
 [2] 無期刑については10年
 [3] 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合,無期刑については7年,犯時18歳未満で10年以上15年未満の有期刑を科された者については3年,不定期刑についてはその刑の短期の3分の1
 「改悛の状があるとき」の判断に当たっては,[1]悔悟の情が認められること,[2]更生の意欲が認められること,[3]再犯のおそれがないと認められること,及び[4]社会感情が仮出獄を是認すると認められることの四つの事項を総合的に判断し,保護観察に付することか本人の改善更生のために相当であると認められたときに許可される。