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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第5章/第1節/1 

1 組織の変遷

 矯正にかかわる行政機関として現在,法務省には,内部部局として矯正局が,施設等機関として矯正研修所,刑務所,少年刑務所,拘置所,少年院,少年鑑別所及び婦人補導院が,地方支分部局として矯正管区が,それぞれ置かれている。
 矯正局は,矯正施設を管理する法務省の内部部局の一つである。
 昭和23年2月,法務庁設置法(昭和22年法律第193号)の施行によって司法省が廃止されて法務庁となり,矯正保護事務は,法務行政官の下で「矯正総務局」,「成人矯正局」及び「少年矯正局」の3局が担当することとなった。その後,24年6月,法務庁が法務府と改称されるとともに,上記3局を統合した「矯正保護局」が設置され,さらに,27年8月,法務府が法務省とされた際,これを「矯正局」と改めた。
 矯正管区は,管轄区域内の矯正施設の適正な運営管理を図るために置かれた地方支分部局であり,高等裁判所,高等検察庁及び地方更生保護委員会に対応して全国を8管轄区域に分け,それぞれに置かれている。
 昭和23年12月,それまで戦時行刑の運営のため,行刑警備管区として機能していた組織が,行刑全般について現場に即した指揮監督を行うための中間監督機関である矯正保護管区として新たに発足した。この制度は,27年の組織改正で改められ,おおむね現在の矯正管区の組織が整えられた。
 刑務所及び少年刑務所は,懲役,禁錮及び拘留の刑に処せられた者を,刑の執行のために収容し,これらの者に必要な処遇を行うことを主な任務とする監獄であり,拘置所は,主として未決拘禁者(勾留中の被告人及び被疑者をいう。以下同じ。)を収容する監獄である(以下,これらを総称して「行刑施設」という。)。
 行刑施設の組織は,監獄官制(明治36年勅令第35号)により定められていたが,昭和23年にこれが廃止され刑務所及び拘置所令(昭和23年政令第268号)が公布された。同令は,監獄法にいう「監獄」について,それまで個々の監獄の名称として用いられていた刑務所,少年刑務所及び拘置所との名称を監獄の種別の総称としても用いることとした。その後,27年の組織再編を経るなどして,平成5年4月には,処遇効果を高めるための処遇体制の確立を図るとともに,職員の職務評価を高めることをねらいとした専門官制が導入されたことに伴い,組織規程の全面的な改正が行われ,組織体制の再編が図られた。
 なお,近年における外国人被収容者の増加等の諸情勢に対応するため,平成7年には府中刑務所に,また,9年には大阪刑務所に,それぞれ国際対策室が新たに設けられ,外国語による被収容者の面会,信書の発受等の際の通訳・翻訳業務の実施及びこれら業務に関する他の矯正施設の支援等を行うこととされた。
 平成8年12月31日現在,刑務所59庁,少年刑務所8庁,拘置所7庁が設置されているほか,刑務所,少年刑務所及び拘置所には支所(刑務支所及び拘置支所)が合計118庁設置されている。
 婦人補導院は,売春防止法により補導処分に付された成人の女子を収容し,その更生のために必要な補導を行う矯正施設であり,昭和33年3月の同法の一部改正に伴い,設置された。(本編第2章第3節3参照)
 当初は,東京,大阪及び福岡に合計3庁が設置されたが,その後の収容人員の減少により,平成9年4月1日現在,東京の1庁だけとなっている。
 なお,現在,行刑施設に勤務する職員は,法務事務官で監獄法上の戒護権を有する刑務官のほか,法務技官,法務教官等である。