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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第1章/2 

2 非行少年

 II-2図は,非行少年に対する処遇の流れを示したものである。
 警察等は,犯罪少年(交通反則金納付事件に係るものを除く。)を検挙した場合,罰金以下の刑に当たる犯罪については,事件を直接家庭裁判所に送致し,それ以外の犯罪については,検察官に送致する(犯罪少年,触法少年及び虞犯少年の概念については,第1編第5章第1節参照)。

II-2図 非行少年処遇の流れ

 犯罪少年の事件送致を受けた検察官は,捜査を遂げた上,犯罪の嫌疑があると認めるとき,又は犯罪の嫌疑がない場合でも虞犯等で家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認めるときは,処遇意見を付けて,事件を家庭裁判所に送致する。
 触法少年及び14歳未満の虞犯少年については,児童福祉法上の措置を優先させることになる。すなわち,同法によれば,保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者は,これを都道府県の福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないとされている。
 家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これらの少年を審判に付することかできる。
 14歳以上の虞犯少年については,原則として,これを発見した者が家庭裁判所に通告しなければならないとされている。この虞犯少年が18歳未満であるときは,警察官又は保護者は児童相談所に通告することができる。
 家庭裁判所は,まず少年に関する調査を実施するが,家庭裁判所調査官に,少年の生い立ち,生活環境等に関する社会調査を行わせるほか,調査及び審判に資するため必要があるときは,少年を少年鑑別所に送致して資質鑑別を求めることができる。少年鑑別所は,少年の身柄を一定期間収容するとともに,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門知識に基づいて少年の資質を鑑別し,その結果は家庭裁判所に提出される。
 家庭裁判所は,これらの調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付することか相当でないと認めるときは,審判不開始決定をして事件を終局させ,また,審判を開始するのが相当と認めるときは,審判開始の決定をする。審判の結果,保護処分に付することかできず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,不処分の決定をする。
 家庭裁判所は,調査又は審判の結果,児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,事件を児童相談所長に送致し,刑事処分を相当と認めるときは,事件を検察官に送致する(ただし,送致のとき,16歳未満の少年については,検察官に送致することができない。)。後者は逆送とも呼ばれ,送致を受けた検察官は,原則として起訴することになっている。起訴された少年に対するその後の処遇の流れは成人の場合と同様であるが,犯行時18歳未満の者に対しては,死刑をもって処断すべきときは無期刑を科し,また,無期刑をもって処断すべきときは10年以上15年以下において懲役又は禁錮を科すること,少年に対して長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときは,その刑の範囲内において不定期刑(刑の短期と長期を定める。)を言い渡すこと,成人と区別された少年刑務所等で処遇することなどの特則がある。
 家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することを相当と認める場合には,保護観察,教護院・養護施設送致,少年院送致のいずれかの決定を行う(なお,平成9年6月に公布され10年4月から施行される児童福祉法等の一部改正法によって,教護院は児童自立支援施設に,養護施設は児童養護施設に,それぞれ改称された。この点につき,本編第2章第2節3参照。)。
 家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年は,原則として,20歳に達するまで,保護観察官及び保護司の指導監督を受け,改善更生のために必要な補導援護を受けるが,その期間中に行状が安定し,再犯のおそれがなくなったと認められた場合は,保護観察の解除等の措置が執られる。
 教護院・養護施設送致となった少年は,児童福祉法による施設である教護院(不良行為をなし,又はなすおそれのある児童を教護することを目的とする施設をいう。)又は養護施設(保護者がいない児童,虐待されている児童等の養育保護を行う施設をいう。)に収容される。
 少年院送致となった少年は,初等,中等,特別又は医療のいずれかの種別の少年院にそれぞれ収容され,矯正教育を受けつつ更生への道を歩み,仮退院が許可され出院した後には,保護観察に付される。
 このほか保護観察に付される少年としては,刑の執行を猶予されて保護観察に付された少年及び少年刑務所等の行刑施設で刑の執行を受け仮出獄した少年がある。