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 平成 9年版 犯罪白書 第1編/第4章/第8節 

第8節 労働関係犯罪

 ここでは,労働基準法違反,船員法違反,職業安定法違反,労働安全衛生法違反及び労働者派遣法違反の各労働関係特別法犯について,その推移を概観する。
 I-53図は,労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。(巻末資料I-7参照)

I-53図 労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 労働基準法違反は,昭和30年代後半から急増し42年に6,449人のピークに達した後,急激に減少し,その後は増減を繰り返しながら長期的に減少傾向を見せ,最近3年間はほぼ横ばいの状態で推移している。平成8年は,前年に比べて3人減少し875人となっている。同法違反の中では,賃金の支払に関する24条違反及び深夜業に関する61条(60年6月の同法一部改正以前は62条)違反が,受理人員の多くを占めている。
 船員法違反は,昭和41年から大きく増加し,43年に2,401人に達した後は,50年代末までほぼ1,500人から2,000人の間で推移し,60年にやや大きく減少した後は緩やかな減少傾向にあった。平成8年は前年と比べて88人(72.7%)増加して209人となっている。
 職業安定法違反は,昭和31年に5,065人まで急増した後,33年に急激に減少している。これは,21年1月に公娼制度が廃止された後,33年4月の売春防止法の罰則規定の施行を見るまで,売春の業務に就かせる目的で女子を供給・募集する行為に対して,職業安定法が適用されていたことによるものである。34年には459人まで減少するが,その後増加傾向を示し43年には1,129人となった。44年以降は,わずかに増減を繰り返しながらも減少傾向が続き,平成8年は前年に比べて53人(25.5%)増加して261人となっている。同法違反の中では,暴力的方法で,又は有害業務に就かせる目的で行う労働者募集等に関する63条違反の受理人員が多くを占めている。
 労働安全衛生法違反は,昭和47年の同法施行後55年までの間2,000人台の水準にあったが,その後は増減を繰り返し,ここ数年は1,800人台が続いていた。平成8年は前年と比べ,202人(10.8%)増加し,5年ぶりに2,000人台に達している。同法違反の中では,危険防止のため事業者の講ずるべき措置に関する20条及び21条違反並びに一定の危険業務に無資格者を就労させることの禁止に関する61条違反が受理人員の多くを占めている。
 労働者派遣法違反は,平成5年までは増加傾向にあったが,その後は緩やかに減少しつつあり,8年には前年から7人減少して94人になっている。一定の業務以外の労働者派遣事業を行うことの禁止に関する4条違反が,同法の受理人員の大部分を占めている。