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3 暴力団犯罪の動向 I-45図は,暴力団勢力の刑法犯検挙人員及び特別法犯送致人員の推移を見たものである。
昭和30年代の検挙人員は刑法犯を中心に5万人以上の高い数値で推移している。この時期は20年代後半からの朝鮮戦争特需等を契機とした社会経済の復興の中,大都市や新興工業都市に盛り場が誕生し,新たな利権をねらって一部の暴力団が全国規模での勢力拡大を図るなどし,多くの抗争事件が続発した。暴力団勢力の刑法犯検挙人員を罪名別に見ても暴行,傷害及び殺人による検挙人員が総数の約半数を占めていた。法制面においては,当時の暴力団勢力の悪質な犯罪を契機の一つとして,33年には刑法に凶器準備集合罪及び証人威迫罪が新設され(本編第2章第1節2参照),37年から40年の間には多くの地方公共団体でいわゆる愚連隊防止条例が制定されている。さらに,40年には銃刀法の一部改正が行われているが(本編第2章第2節3参照),この際,衆議院地方行政委員会で暴力団取締強化についての附帯決議がなされた。 I-45図 暴力団勢力の刑法犯検挙人員及び特別法犯送致人員の推移 こうした暴力追放の世論の盛り上がりを背景に,昭和39年がら40年にかけて警察の暴力団に対する集中取締り,いわゆる頂上作戦が実施された。この結果,この両年は暴力団勢力の刑法犯検挙人員及び特別法犯送致人員の合計が6万人近くに達するが,41年には急激に減少している。昭和40年代末以降,刑法犯検挙人員が減少しているのに対し,特別法犯送致人員は一時増加傾向が見られるが,覚せい剤取締法違反,競馬法違反等が多数を占め,暴力団の資金獲得活動としてこれらの非合法活動が行われていることがうかがわれる。その後,特定の暴力団による寡占化やいわゆる民事介入暴力の多発など,暴力団による不当な活動の多様化,潜在化が進んだことに対し,平成3年には暴力団対策法が制定された。(本編第2章第2節3参照) 暴力団対策法の制定後,暴力団勢力の刑法犯検挙人員は横ばいから減少傾向を見せているのに対し,特別法犯送致人員は漸増を続けている。平成8年は刑法犯が1万8,779人と前年から117人減少したのに対し,特別法犯は1万4,491人と376人増加している。暴力団勢力の検挙・送致人員の罪種別構成比は,覚せい剤取締法違反(23.7%),傷害(13.8%),恐喝(8.0%),賭博(7.5%)の順になっている。I-46図は,最近10年間の暴力団による対立抗争事件の発生回数及びそのうち銃器が用いられた回数が占める比率(以下「銃器使用率」という。)を示したものである。暴力団対策法が成立した平成3年以降,対立抗争事件の発生回数は急減しているが,銃器使用率は依然として高い。 なお,平成4年の暴力団対策法の施行後発出された中止命令(暴力的要求行為等を行った指定暴力団員等に対し公安委員会が当該行為の中止を命ずること。)の8年末までの累計は4,685件となっている。このうち,8年の中止命令は1,456件である(警察庁刑事局の資料による。)。 I-46図 暴力団の対立抗争事件発生回数等の推移 |