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10 その他の特別法 以下においては,過激派等による違法行為に対処するために制定された特別法について概観する。
昭和43年ころから,過激派の集団暴力事犯の主な凶器として火炎びんが多量に使用されるようになり,火炎びんの製造,所持,使用等を処罰する必要が生じたことから,47年4月に,火炎びんの使用等の処罰に関する法律(昭和47年法律第17号)が公布(同年5月施行)された。 昭和45年3月に発生した,日本国内線の旅客機が不法奪取(ハイイジャッキング)されたいわゆる「よど号事件」を直接の契機として,また,当時,同年中にも採択される見込みであった,ハイジャック犯罪の規制を目的とした航空機の不法な奪取の防止に関する条約(昭和46年条約第19号)(1971年10月発効。いわゆる「ヘーグ条約」)の要請に応じるために,45年5月に航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和45年法律第68号)(以下「航空機強取法」という。)が公布(同年6月施行)された。同法は,暴行・脅迫等を用いて航行中の航空機を強取し,又はほしいままにその運航を支配する罪等を新設し,その国外犯を処罰することとした。 その後,ハイジャッキング以外の航空機に対する爆破その他の不法行為の規制を目的とした民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(昭和49年条約第5号)(1974年7月発効。いわゆる「モントリオール条約」)の批准のために制定された航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和49年法律第87号)が昭和49年6月に公布(同年7月施行)された。同法には,業務中の航空機を破壊する行為等の処罰規定等が設けられた。 その後,昭和52年9月には,日本の国際線の旅客機が乗っ取られ,バングラデシュのダッカ空港に着陸させられた上,日本国内で身柄拘束中の者の釈放等を要求される事件が発生した。当時,この事件をはじめとして,航空機の乗っ取り,在外公館の占拠等の不法事犯が過激化・悪質化する傾向にあったことから,52年には航空機強取法の一部改正(同年12月施行)によって航空機強取犯人による人質強要に係る罪を設けるなどの措置が採られたが,さらに,航空機強取を手段とするものを含めて,それ以外の方法で行われる人質による強要行為に対しても一層有効な取締りを実施するとの観点から,53年5月には人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和53年法律第48号)が公布(同年6月施行)された。同法は,人質による強要に係る特定の行為(二人以上共同して,かつ,凶器を示して人を逮捕又は監禁した者による行為)を処罰する規定を新たに設け,この「人質による強要」の罪を犯した者が人質を殺害した場合を特に重く処罰するとともに,これらの罪について国外犯処罰規定を設けることとした。同法は,その後,人質をとる行為に関する国際条約の実施のための措置として,昭和62年の刑法一部改正(本章第1節2参照)に併せて一部改正がなされ,それまでの「人質による強要」の罪が「加重人質強要」の罪と改められた上,必ずしも二人以上共同して凶器を示してすることを要件とはしない「人質による強要等」の罪等とともに,同法に定める罪全般についての国外犯処罰規定が設けられた。 平成7年3月に発生した,いわゆる「地下鉄サリン事件」等の猛毒ガスサリンによる無差別テロと同種の事犯の再発を防止するため,サリン等の製造,所持等を禁止し,その発散行為の罰則,発散による被害発生の場合の措置等を定めたサリン等による人身被害の防止に関する法律(平成7年法律第78号)が同年4月に公布(一部を除いて即日施行)された。また,同法と相前後して,同年4月,化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成7年法律第65号)が公布(一部は同年5月施行)された。これは,化学兵器の開発,生産,貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(平成9年条約第3号)の適確な実施を確保するために,化学兵器(砲弾,ロケット弾等の兵器で,毒性物質等を充てんしたもの)を使用して毒性物質等を発散させる行為,同兵器の製造・所持等を処罰するものである。 |