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 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第9章/第1節/4 

4 犯罪及び被害者対策

 アメリカでは,犯罪を厳しく処罰する姿勢を打ち出しており,数多くの犯罪対策を講じているが,これらの幾つかについて,主として連邦法の範囲で概観する。
 近年では,「1994年の暴力犯罪取締り及び法執行法,(Violent Crime Control and Law Enforcement Act of 1994)」において,殺人や強盗を含むある範囲の重罪で有罪となった連邦法違反者のうち,連邦や州で過去に2回以上殺人や強盗を含むある範囲の重罪で有罪となった者等に,仮釈放のない無期刑を科す,いわゆる三振法("Three Strikes and Youre Out" Law)を制定した。また,多くの州でも同種の法律を制定している。
 増加する銃器犯罪に歯止めをかけるため,1993年に成立した,いわゆるブレディ法(Brady Handgun Violence Prevention Act)により,けん銃の購入について,待機期間(waiting period)を定め,購入希望者の犯罪歴などを警察を通じて確認することを業者に義務づけるなどした。さらに,「1994年の暴力犯罪取締り及び法執行法」では,特定のセミオートマチック・アソールト・ウエポンの製造,取引及び所持を制限し,また,威力のある弾丸を装てんできる部品の取引と所持を禁止する等した。
 犯罪被害者対策は,州や民間組織レベルで活発に行われている。一方,連邦では,「1984年総合犯罪規制法(Comprehensive Crime Control Act of 1984)」の14章において,「1984年犯罪被害者法(Victim of Crime Act of 1984)」を制定し,犯罪被害者基金を設け,連邦法違反により有罪とされた者から徴収したほぼすべての罰金,罰金賦課額(penalty assessments),没収された出頭保証金(appearance bond)等を用い,州の行う犯罪被害者補償計画や犯罪被害者援助計画に補助を行うことを定めた。また,「1994年の暴力犯罪取締り及び法執行法」において,暴力犯罪等の被害者が,刑の宣告に先立って裁判所に対し意見を述べる権利を認める等を規定し,次いで,「1996年テロリズム対策法(1996 Antiterrorism and Effective Death Penalty Act)」の2編において,「1996年被害者賠償法(Mandatory Victims Restitution Act of 1996)」を制定し,連邦法.違反で有罪を宣告された者に,被害者に対して賠償を行うことを義務づけた。