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1 少年鑑別所における鑑別 (1) 概 説
少年鑑別所は,家庭裁判所が行う少年の調査及び審判並びにその後の保護処分の執行に役立てるため,医学,心理学,教育学,社会学等の専門知識に基づいて少年の資質の鑑別を行っている。 少年鑑別所は,家庭裁判所に対応して設置されており,その数は,平成8年3月31日現在,本所52,支所1となっている。少年鑑別所に勤務する職員は,法務教官,法務技官,法務事務官等であるが,このうち法務教官は後述する観護処遇に携わり,法務技官は少年の資質鑑別を行っている。 家庭裁判所が受理した少年のうち,非行を疑うに足りる相当な理由があるなど一定の要件を満たす者については,同裁判所の決定をもって観護の措置(少年の身柄を,原則として2週間,特に必要があるときは決定により更に2週間延長して最長4週間収容する。)がとられ,少年鑑別所に収容される。 これらの少年は,非行傾向,資質及び環境の面でも問題の大きい者が比較的多く,詳細な鑑別を行っている。 その際には,少年を明るく静かな環境に置いて,安んじて審判を受けられるようにするとともに,そのありのままの姿をとらえて,資質の鑑別に資するため,少年の心情の安定を図り,処遇場面を通じて得られる行動観察を記録するという観護処遇も,少年鑑別所の大切な機能である。 (2) 入・退所状況 平成7年において観護の措置をとられた少年は,,一般保護事件では1万3,116人,道路交通保護事件では1,510人で,それぞれ家庭裁判所が受理した少年の7.0%,1.4%を占めている。少年鑑別所への収容には,本来の観護の措置のほか,勾留に代わる観護の措置,勾留等があるが,平成7年における少年鑑別所新収容人員1万4,265人の入所事由を見ると,観護の措置が86.1%で最も多く,次いで,勾留に代わる観護の措置が11.5%となっている。 少年鑑別所新収容人員の推移を見ると,新収容人員は,II-33図及び巻末資料II-12のとおり,昭和60年以降,減少傾向を示している。 II-33図 少年鑑別所新収容人員の推移(昭和24年〜平成7年) 平成7年における少年鑑別所退所事由別人員を見ると,II-24表のとおり,保護観察(41.4%)が最も多く,以下,少年院送致(27.0%),試験観察(16.4%),観護措置の取消し(6.4%)の順となっている。II-24表 少年鑑別所退所事由別人員(平成5年〜7年) (3) 鑑別業務少年鑑別所における鑑別業務は,家庭裁判所関係,法務省関係及び一般少年鑑別の三つに区分される。 家庭裁判所関係の鑑別は,先に述べた観護の措置の決定によって身柄を収容した場合に行う収容鑑別と,身柄を収容しないで家庭裁判所の請求により行う在宅鑑別とがある。 II-34図は,少年鑑別所における収容鑑別の対象少年に対する標準的な鑑別の流れを示したものである。 II-34図 少年鑑別所における収容鑑別対象少年の鑑別の流れ 収容鑑別においては,収容鑑別の基準に従い,鑑別のための面接,身体状況の調査,心理検査,精神医学的検査・診察,行動観察及び関係機関,家族等からの資料(外部資料)の収集が行われる。こうした調査の結果から得られた情報は,判定会議において総合され,当該少年の資質の特質及びその問題点並びに少年を非行に走らせた要因及び再非行の危険性の程度が明確にされる。そして,改善更生のための最適の処遇方針等が鑑別判定意見として決定され,審判の前には,鑑別結果通知書としてまとめられ,家庭裁判所に提出される。鑑別の結果は,他の記録と共に少年簿に記録され,保護処分の決定がなされた場合,その処分の執行に資するため,少年院,保護観察所等へ送付される。少年院送致の決定があった場合は,少年院において個人別に作成される個別的処遇計画の参考に供するため,処遇指針票が作成され,少年の身柄と共に送付きれる。 在宅鑑別は,少年を家庭裁判所,少年鑑別所等に出頭させて行うもので,鑑別のための調査は,時間的な制約から,面接及び心理検査による場合がほとんどである。鑑別の結果は,鑑別結果通知書にまとめられ,家庭裁判所に提出される。 法務省関係の鑑別は,関係機関からの依頼による鑑別で,次の三つがある。 [1] 検察庁 主として捜査段階における少年に対する簡易鑑定 [2] 少年院 主として処遇の過程において,問題等を改めて見直し,処遇計画の変更を考慮する必要かある少年に対する再鑑別 [3] 地方更生保護委員会・保護観察所 主として仮釈放の審理又は保護観察の実施のため必要がある少年に対する鑑別 一般少年鑑別は,主として社会一般の少年の教育,職業指導その他育成補導に関する方針の決定に資するため,一般市民,公私の団体等から依頼されて資質の鑑別を行うものである。こうした業務を通じ,少年鑑別所は,地域社会の青少年相談センターの役割を果たし,広く一般市民の要望にこたえ,青少年の健全育成,非行防止等に寄与している。 最近3年間における少年鑑別所の鑑別受付人員は,II-35図のとおりである。平成7年における鑑別受付人員総数は,前年と比べ0.1%増加して5万6,226人となっている。鑑別受付人員の内訳では,-般少年鑑別が2万7,546人(総数の49.0%)で最も多く,家庭裁判所関係の収容鑑別が1万5,081人(同26.8%)でこれに次いでいる。7年における一般少年鑑別は,前年と比ベ1.9%の増加となっている。交通事件(主たる非行が自動車又は原動機付き自転車の運転に係るものをいう。)に限って見ると,保護関係機関からの依頼鑑別が68.6%で最も多くなっているが,これは,交通事件により保護観察処分に付された少年を対象として,鑑別担当者が保護観察所に出向いて,交通鑑別(運転適性検査,運転態度検査等)を実施しているためである。 II-35図 鑑別受付人員(平成5年〜7年) II-25表は,平成7年における家庭裁判所関係の収容鑑別のうち,鑑別判定を終了した少年について,鑑別判定と審判決定等との関係を見たものである。在宅保護相当と判定された者では,76.0%が保護観察に,14.1%が決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察に,それぞれ付されている。また,少年院送致相当と判定された者では,52.1%が少年院に送致されているが,22.3%が保護観察に,20.5%が前記の試験観察に,それぞれ付されている。 II-25表 鑑別判定と審判決定等との関係(平成7年) (4) 収容鑑別対象少年の特質平成7年の少年鑑別所新収容者について,男女別及び年齢層別に上位5非行を取り上げて見ると,男子は,すべての年齢層で窃盗が最も多く,以下,年少少年では,虞犯,傷害,恐喝,強盗の順となり,中間少年では,道路交通法違反,傷害,恐喝,毒劇法違反の順となり,年長少年では,傷害,道路交通法違反,恐喝,覚せい剤取締法違反の順となっている。女子は,年少少年では虞犯が最も多く,以下,窃盗,傷害,毒劇法違反,恐喝の順となり,中間少年では虞犯が最も多く,以下,覚せい剤取締法違反,窃盗,毒劇法違反,傷害の順となり,年長少年では覚せい剤取締法違反が最も多く,以下,窃盗,毒劇法違反,虞犯,傷害の順となっている。 II-36図は,平成7年の入所者のうち,収容鑑別を終了した少年の入所前の問題行動について,「経験あり」の占める比率を男女別及び年齢層別に見たものである。男子では,喫煙がどの年齢層でも93%を超え,最も高い。経験者の比率が80%を超えているものは,年少少年では,無免許運転,中間少年では,飲酒,無免許運転,年長少年では,飲酒,性経験である。女子は,年少少年では,喫煙,中間少年及び年長少年では,性経験がそれぞれ最も高く,93%を超えている。経験者の比率が80%を超えているものは,年少少年では,家出,性経験,飲酒,中間少年及び年長少年では,喫煙,飲酒である。有機溶剤及び覚せい剤の薬物経験者の比率は,年齢層を問わず,いずれの薬物についても,女子が男子より高い。 II-36図 収容鑑別終了少年の入所前の問題行動経験者の比率(平成7年) |