6 行刑に関する動向及び今後の課題 (1) 外国人被収容者処遇業務の支援体制 矯正施設では外国人被収容者が急増し,その国籍及び使用言語が多様化したことにより,外国語による被収容者の面会内容の聴取,信書の検閲等に困難を生じている。 そこで,平成7年度に府中刑務所に国際対策室を設置し,同所を矯正施設の通訳・翻訳センターとし,各矯正施設では対処困難な外国語による被収容者の面会,信書の発受等の際の通訳・翻訳業務を支援することとした。 (2) 矯正情報ネットワークシステムの整備 法務省矯正局では,効率的な矯正施設の運営とより効果的な被収容者処遇の実現のために,全矯正施設間を結ぶ矯正情報ネットワークシステムを整備し,情報の集約化と大規模災害に際して速やかに支援できる体制の充実を図っている。 (3) 国際会議の開催 平成7年9月には,第15回アジア太平洋矯正局長等会議が日本で開催され,矯正施設の運営に関する共通の問題について,日本を含むアジア太平洋の18の国と地域の代表による意見交換が行われた。 (4) 監獄法の改正作業 我が国においては,明治41年に制定された監獄法が,約90年間,実質的改正を見ることなく今日に至っているが,その間における社会情勢や刑事政策思潮の発展にかんがみ,監獄法の全面改正が必要とされた。 昭和57年,第96回国会に同法の全部を改正する刑事施設法案が提出されたが,翌年11月,衆議院の解散により廃案となった。その後,同法案は修正が加えられて,62年及び平成3年に国会に提出されたが,いずれも衆議院の解散により廃案となった。 しかしながら,同法案の成立の必要性には,いささかも変わりがなく,法務省としては,同法案の再提出に向けて引き続き努力するとともに,行刑運営の一層の適正化を早期に図るため,法案の内容等を踏まえた行刑運営の改善を実施している。 監獄法改正の重点は,次のとおりである。 [1] 被収容者の書籍の閲覧,面会及び信書の発受,宗教上の行為等被収容者の権利事項を明示するとともに,規律秩序維持の要件と限界や懲罰の適正手続等,生活及び行動に対する制限の根拠と限界を明確にし,併せて簡易迅速な手続により被収容者の権利救済を図るための不服申立制度についても規定すること。 [2] 被収容者に適正な生活条件を保障するため,被収容者には食事,衣類,日用品その他日常生活を営むのに必要な物を支給し又は貸与することを明示するほか,被収容者が自弁の物を使用し得る範囲を拡大し,また,運動,入浴,健康診断,疾病の診療等,保健衛生及び医療に関する施策を充実すること。 [3] 受刑者の改善更生のための効果的な処遇制度を確立するため,その処遇は,個々の受刑者の資質及び環境に応じて,最も適切な方法で行うという「処遇の個別化」の原理を明らかにし,特に矯正処遇としての作業,教科指導,治療的処遇及び生活指導については,個々の受刑者の特性に応じた適切な処遇要領に基づいて計画的に行うことを明らかにするほか,外部通勤作業,外出,外泊等の効果的な処遇方策を導入すること。 [4] 現行のいわゆる代用監獄制度については,行刑施設に収容される者と留置施設に収容される者の処遇に差を生じないよう規定を整備するほか,代替収容の対象を限定するなどの制度的改善を加えること。
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