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1 概 説 精神障害者による犯罪は,刑事責任能力の観点からその取扱いが異なる場合がある。そこで,本節では,刑事司法機関等における精神障害者の処遇状況等を概観する。
(1) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による取扱い 平成7年5月19日,「精神保健法の二部を改正する法律(平成7年法律第94号)」が公布され,精神保健法は,名称も,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下,「精神保健福祉法」という。)と改められ,一部を除き同年7月1日施行された。精神保健福祉法は,精神障害者とは,精神分裂病,中毒性精神病,精神薄弱及び精神病質その他の精神疾患を有する者をいう(同法5条)と定義している。 同法によれば,都道府県知事及び指定都市の市長は,精神障害者又はその疑いのある者について,一般人による申請,警察官・検察官・保護観察所の長・矯正施設の長による通報,精神病院の管理者による届出を受けた場合等で必要と認めるときには,指定医の診察を求める。さらに,都道府県知事等は,その者が精神障害者であり,かつ,入院させなければ自傷他害のおそれがあると認めることにつき,2人以上の指定医の診察の結果が一致したときは,その者を国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院に入院させることができる(通例「措置入院」と呼んでいる。)。 (2) 措置入院者数等の推移 I-53図は,平成元年以降について,精神保健法及び精神保健福祉法(以下,「精神保健法等」という。)の規定に基づく申請・通報・届出の総件数,指定医の診察を受けた者の数及び措置入院となった者の数の推移を見たものである。 I-53図 精神保健法等による申請・通報・届出件数,指定医の診察を受けた者の数及び措置入院者数の推移 (3) 刑法による取扱い刑事裁判においては,精神の障害によって,自己の行為の是非善悪を弁別する能力を欠くか,又はその能力はあるがこれに従って行動する能力がない者は,心神喪失者として,刑罰を受けることがなく,また,このような弁別能力又は弁別に従って行動する能力の著しく低い者は,心神耗弱者として,刑が減軽される。 |