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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第2章/第5節/2 

2 精神障害のある犯罪者の概況

(1) 精神障害者等の刑法犯罪名別検挙人員
 警察庁の統計によれば,平成7年における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員29万3,252人のうち,精神障害者は473人,精神障害の疑いのある者は1,204人であった(以下,精神障害者と精神障害の疑いのある者をまとめて「精神障害者等」という。)。したがって,交通関係業過を除く刑法犯検挙人員に占める精神障害者等の比率は,0.6%であり,低い数値である。

I-54図 精神障害者又は精神障害の疑いのある者の刑法犯罪名別検挙人員

 I-54図は,交通関係業過を除く刑法犯検挙人員のうち,精神障害のため自傷他害のおそれがあるとして,精神保健法等により都道府県知事等への通報の対象とされた精神障害者等の人員を罪名別に見たものである。人員では,窃盗・詐欺・横領が最も多く,精神障害者等の総数(1,677人)の56.4%を占めているが,精神障害者等の罪名別検挙人員総数中に占める比率では,放火の17.5%,殺人の12.0%が目立って高くなっている。
(2) 心神喪失・心神耗弱者の刑事処分
 平成3年から7年までの5年間に,検察庁で不起訴処分に付された被疑者のうち,精神障害のため,心神喪失と認められた者及び心神耗弱と認められ起訴猶予処分に付された者並びに第一審裁判所で心神喪失を理由として無罪になった者及び心神耗弱を理由として刑を減軽された者は,合計4,053人である(以下,本節において,この4,053人を「対象者」という。)。
 I-16表は,対象者の数を年次別に示したものである。

I-16表 心神喪失・心神耗弱者の人員

 次に,I-17表は,対象者について,罪名別及び精神障害名別に,不起訴処分理由及び裁判結果を見たものである。これによると,罪名別の区分中「その他」(窃盗その他の刑法犯を含む。)の総数に占める比率が,I-54図の検挙人員に占めるこれらの者の比率と比較して,相対的に低くなっている。これは,主として,これらの者の精神障害の状況が,検挙後,刑事責任を問い得る状況であると認められるに至ることが多いためと思われる。

I-17表 罪名・精神障害名別処分結果