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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/3 

3 保護処分対象少年の特性と再非行防止

 この項は,平成7年に保護処分に付された少年の中から,新たに保護観察(交通関係の非行性はあるが,それが深まって,いない者を対象としている交通短期保護観察を除く。)処分を受けた少年(以下,本項では「保護観察処分少年」という。)と少年院送致処分を受けた少年(以下,本節では「少年院新収容者」という。)の,それぞれの特性と保護観察の成り行きを見るものである。
 なお,本文中,特に記載がある場合を除き,保護観察処分少年については,平成7年の保護統計年報の,少年院新収容者については,同年の矯正統計年報の,それぞれの数値に基づく。
(1) 保護処分対象少年の特性
ア 非行の種類
 I-11表は,保護観察処分少年及び少年院新収容者について,処分を受ける原因となったそれぞれの非行の種類を見たものである。保護観察処分少年では交通事犯の比率が,少年院新収容者では財産犯の比率が,それぞれ最も高い。また,男女別の構成比を見ると,薬物事犯及び虞犯においては,保護観察処分少年及び少年院新収容者共に,女子の比率が男子を上回っている。

I-11表非行の種類別構成比

イ 処分歴
 保護観察処分少年のうち,保護観察処分歴がない者の比率は80.6%であり,少年院新収容者のうち,少年院送致歴がない者の比率は84.4%である。
ウ 薬物等使用関係及び不良集団関係
 I-12表は,非行時に薬物等を使用していた者(以下,本節では「薬物等使用者」という。)及び不良集団と交渉を持っていた者の状況を見たものである。

I-12表 薬物等使用関係及び不良集団関係構成比

 保護観察処分少年及び少年院新収容者のうち,今回の処分を受ける原因となった非行が薬物事犯であった者のそれぞれの総数に占める比率は,I-11表に示したとおり,7.5%,13.9%である。しかし,保護観察処分少年及び少年院新収容者のうち,薬物等使用者の比率はI-12表のとおり,それぞれ,20.6%,32.3%で,今回の処分を受ける原因となった非行が薬物事犯であった者のそれぞれの総数に占める比率より高い。さらに,薬物等使用者の男女別構成比を見ると,保護観察処分少年及び少年院新収容者共に,女子が男子を上回っている。
 不良集団と交渉を持っていた者の比率は,少年院新収容者の方が保護観察処分少年より高い。
 I-13表は,最近5年間について,薬物等使用者の比率の推移を,保護観察処分少年及び少年院新収容者別に見たものである。保護観察処分少年及び少年院新収容者共に,薬物等使用者の比率は減少傾向にある。

I-13表 薬物等使用者の推移

エ 生活程度
 I-45図は,保護者の生活程度別構成比を見たものである。保護者の生活程度が貧困とみなされた者の比率は,少年院新収容者が保護観察処分少年より高い。

I-45図 保護者の生活程度別構成比

オ 居住状況
 I-46図は,今回の非行時における家族との同居状況別構成比を見たものである。家族と同居していた者の比率は,保護観察処分少年が少年院新収容者より高い。

I-46図 家族との同居状況別構成比

カ 職業生活
 I-47図は,職業別構成比を見たものである。有職者及び学生・生徒の比率は,ともに保護観察処分少年が少年院新収容者より高い。

I-47図 職業別構成比

キ 教育程度
 I-48図は,教育程度を見たものである。保護観察処分少年の教育程度は,6割以上が高等学校在学以上であるのに対し,少年院新収容者では6割以上が中学校卒業までである。

I-48図 教育程度別構成比

(2) 再非行防止
 保護観察の開始時期のいかんを問わず,平成7年中に保護観察が終了した者のうち,保護観察期間中に,再度の犯罪・非行により刑事処分(起訴猶予を含む。)又は保護処分(戻し収容を除く。)を受けた者の,保護観察に付された日から処分を受けた日までの期間別人員を見たのがI-49図である。
 I-14表は,昭和58年から平成2年までの各年において保護観察に付された少年のうち,各人それぞれの保護観察が終了するまでの間に,再度の犯罪・非行を行ったことにより刑事処分又は保護処分(戻し収容を除く。)を受けた者の比率(以下,「再犯率」という。)を示したものである。再犯率の平均は,保護観察処分少年では19.2%,少年院仮退院者では27.7%である。

I-49図 保護観察中の再犯の再犯期間別構成比

I-14表 保護観察期間中における再犯率