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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/2 

2 検挙補導少年の特性

(1) 窃盗事犯少年
 I-41図は,窃盗の手口を侵入盗,非侵入盗及び乗物盗の三つに大別し,最近10年間について,それぞれの検挙人員の推移を見たものである。窃盗事犯少年の検挙人員総数は,平成に入って一貫して減少を続けているが,非侵入盗だけが5年以降徐々に増加している。
 平成7年の窃盗事犯少年検挙人員について,手口別構成比を見ると,万引きが最も高く(39.7%),次いでオートバイ盗(24.4%),自転車盗(17.6%),自動車盗(3.4%)の順となっている(警察庁の統計による。)。
 窃盗事犯少年検挙人員における,学生・生徒の占める割合を手口別に見ると,非侵入盗と乗物盗ではそれぞれ85.4%,81.6%であるのに対し,侵入盗では58.1%と前二者より低い。ちなみに,侵入盗では有職少年,無職少年の比率がそれぞれ18.0%,24.0%となっている。
 平成7年の法務省の特別調査によれば,窃盗事犯少年の犯行動機は,「利欲」が66.6%,「遊び」が26.8%で,「困窮・生活苦」はわずか0.7%にすぎない。

I-41図 窃盗事犯少年の検挙人員の推移

(2) 女子少年の非行
 I-6表は,最近5年間における交通関係業過を除く女子少年刑法犯の主要罪名別検挙人員及び女子比(交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員総数に占める女子少年の比率)の推移を見たものである。また,平成7年の女子少年の交通関係法令を除く特別法犯の送致人員は3,114人で,そのうち毒劇法違反少年が2,245人で最も多く,次いで,覚せい剤事犯少年が540人,その他329人となっており,薬物濫用少年が圧倒的多数を占めている。
 警察庁生活安全局の資料によれば,平成7年において,性の逸脱行為で補導された女子少年(5,481人)の違反態様別構成比を見ると,青少年保護育成条例違反の比率が53.4%(2,929人)と最も高い。また,同資料によれば,性の逸脱行為で補導された女子少年の年齢層別構成比では,中間少年が58.1%で最も高く,職業別構成比では,学生・生徒の割合が64.9%で最も高い。

I-6表 交通関係業過を除く女子少年刑法犯の罪名別検挙人員

(3) 集団非行
 平成7年の少年非行における共犯関係及び非行集団加入の有無について,非行名別に見たのが,I-7表である。7年における共犯率は42.2%で,同年における成人事件の共犯率(14.4%)と比較すると格段に高く,少年非行の一つの特徴となっている。また,非行集団加入率は非行名により大きな差がある。
 警察庁生活安全局の資料によれば,暴走族集団の数は平成6年以降減少し,7年では834集団である。また,構成員数(成人を含む。)も平成3年以降減少傾向にあり,7年では2万6,731人である。

I-7表 犯罪少年の共犯・非行集団関係

(4) 再犯少年
 道路交通事件を除く保護事件の対象少年(以下「一般保護少年」という。)に占める処分歴のある者の比率は,ここ数年減少傾向にある。I-42図は,平成6年について,一般保護少年に占める処分歴のある者の比率を非行名別に見たものである。一般保護少年に占める処分歴のある者の比率は,覚せい剤取締法違反及び毒劇法違反のような薬物事犯において高い。

I-42図 一般保護少年の非行名別前処分回数別構成比

(5) 家庭と非行
 法務省の特別調査により,犯罪少年の家庭環境を見ると,7割は実父母がそろい,9割が経済的に普通以上の家庭の少年である。また,I-8表に見るように,親の養育態度では,放任の比率が高い。

I-8表 犯罪少年の親の養育態度別構成比

 I-43図は,平成7年における家庭内暴力事犯少年の職業別構成比及び暴力の対象別構成比を見たものである。

I-43図 家庭内暴力事犯少年の職業別・対象別構成比

(6) 学校と非行
 I-9表は最近5年間における交通関係業過を除く少年刑法犯中,中学生・高校生別検挙人員及び在学生1,000人当たりの比率を見たものである。

I-9表 少年刑法犯の中学生・高校生別検挙人員及びその在学生に対する比率

 最近5年間における校内暴力事件の検挙件数,検挙人員,被害者等を見たのが,I-10表である。

I-10表 校内暴力事件の検挙状況

(7) いじめと非行
 昨今,児童生徒のいじめ問題が深刻化しており,いじめが関係したと考えられる自殺が発生するなど,憂慮すべき状況にある。
 警察庁生活安全局の資料によれば,平成7年における,いじめに起因した事件の件数は,前年より57件増の160件であり,補導人員も前年より162人多い534人である。また,いじめに起因した事件数のうち,6件がいじめの仕返しによる事件であり,いじめが新たな非行を生み出している事態は看過できない。いじめが犯罪行為等に当たる場合には,第2編第1章の非行少年の処遇に詳述する手続がとられることになる。
 文部省初等中等教育局の資料によれば,平成6年度(会計年度)におけるいじめの態様中,最も件数が多かったものは,ひやかし・からかい(2万1,194件)であり,次いで,暴力(1万4,591件),言葉での脅し(1万3,626件),仲間はずれ(1万3,054件)の順となっており,一口にいじめといってもその態様は様々で,必ずしもすべてが犯罪行為,触法行為又は虞犯行為に当たるとして,刑事司法手続の対象とされるわけではない。
 法務省は,平成6年に,子どもの人権問題を専門的に取り扱う「子どもの人権専門委員(子ども人権オンブズマン)」制度を設け,7年現在,計515人の専門委員を全国の法務局・地方法務局に配置し,いじめに悩む人々に対する相談活動を行い,いじめ解消のための適切な処置を講じている。
(8) 非行少年率の推移
 I-44図は,任意に選択した年次の少年の世代別非行少年率が,その後の少年の成長に従ってどのように変化したかを示したものである。昭和53年,56年,59年,62年,平成2年にそれぞれ12歳であった世代が19歳になるまでの年齢を横軸に,その非行少年率を縦軸にとって図示してある。世代別非行少年率は,どの年次をとっても類似した曲線を描いており,おおむね14歳から16歳の時に高率となり,17歳,18歳,19歳と年齢が高くなるにつれて低くなっている。

I-44図 非行少年率の推移