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2 銃器犯罪対策 (1) 銃砲刀剣類所持等取締法等の改正
政府は,最近における深刻化する銃器犯罪に対する対策として,平成5年,銃砲刀剣類所持等取締法(以下,「銃刀法」という。)及び武器等製造法の一部改正を行った(同年7月15日施行)。この改正により,けん銃等(けん銃,小銃,機関銃及び砲をいう。以下,同じ。)の規制が強化され,けん銃等に係る罰則の法定刑が大幅に引き上げられるとともに,けん銃等不法所持罪の加重類型である加重所持罪(けん銃等と適合実包を共に携帯するなどした場合には,3年以上の有期懲役とする。),けん銃等及びけん銃部品の譲渡し等の罪が新設される一方,けん銃等の提出を促して回収を図り,その使用事犯の発生を極力防止するため,けん銃等を提出して自首した場合の刑の必要的減免規定が新設されるなどした。しかしながら,銃器を使用した犯罪は後を絶たず,7年5月,銃刀法の一部改正が再度行われ(同年6月12日施行),けん銃等の発射を抑止するため,不特定又は多数の者の用に供される場所等において,又はこれらの場所等に向かってけん銃等を不法に発射することが禁止され,また,けん銃実包の所持等が規制されて,それらの違反行為に対する罰則が新設された(上記けん銃不法発射の場合の法定刑は,無期又は3年以上の有期懲役である。)。さらに,けん銃等の密輸入に関する罰則の強化,送り荷中のけん銃等を取り除いて行うコントロールド・デリバリーを実効あるものとするため,けん銃等でない物品をけん銃等として輸入等する行為に対する罰則の新設等が行われた(巻末資料I-11参照)。 なお,水際対策強化の一環として,けん銃等を輸入禁制品に追加する関税定率法の改正も行われた(平成7年1月1日施行)。 (2) 銃刀法等違反事件に対する科刑状況 法務省刑事局の資料により,平成5年7月の銃刀法及び武器等製造法の改正以後,7年12月までの間の,けん銃等に係る銃刀法等違反事件の通常第一審の科刑状況を見たのが,I-30図である。これらの事件により懲役刑を言い渡された者の総数は,546人(うち,執行猶予155人,実刑率71.6%)となっており,事件別では,「けん銃・実包所持」が388人(71.1%),次いで「けん銃の単純所持」が131人(24.0%)で,両者で全体の95.1%を占めている。刑期別に見ると,3年以上5年未満が全体の53.8%を占め,次いで1年以上3年未満が38.6%,5年以上7年未満が4.4%,1年未満が2.4%となっている。 なお,けん銃等を提出して自首し,刑が減免された人員は53人(総数に対する内数。執行猶予12人を含む。)であり,その刑期別の内訳を見ると,1年以上3年未満が22人,3年以上5年未満が21人となっている(巻末資料I-12参照)。 I-30図 けん銃等に係る銃刀法等違反事件に対する科刑状況 (3) 銃器対策における国際協調の推進我が国における銃器対策の現状は,以上のとおりであるが,政府は,銃器規制の更なる徹底を期して,平成7年4月29日から5月8日まで,エジプトのカイロで開催された,「犯罪防止及び犯罪者処遇に関する第9回国連会議」において,銃器規制に関する決議案を提出し,同決議案は,29か国の共同提案国を得て全会一致で採択された。この決議に基づいて,銃器の不正取引に関する実態調査活動が開始されるなど,銃器規制に関する国際協調の進展が図られている。 |