前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 7年版 犯罪白書 第4編/第6章/第3節 

第3節 処  遇

 行刑施設における覚せい剤事犯新受刑者が急激に増加し,5,000人台を超えた昭和54年ころから,覚せい剤等の薬物事犯受刑者のための特別処遇が特定施設で実施されるようになり,56年9月の法務省矯正局長通達により,覚せい剤事犯受刑者の処遇の充実強化が指示されるに及び,これが全国的に実施される運びとなった。
 平成5年4月以降,覚せい剤濫用防止指導が,いわゆる処遇類型別指導の一環として実施されている。これは,犯罪の原因等が同類型である者に対する指導等の充実強化を図ることを目的としたもので,他に,暴力団離脱指導,酒害教育,交通安全教育等がある。7年4月1日現在,覚せい剤濫用防止指導は,74庁のうち72庁で実施されている。また,6年4月以降,山形刑務所等8庁において,指導要領案作りの基礎となる調査・研究が進められた。
 覚せい剤事犯受刑者に対しては,覚せい剤とのかかわりの程度,犯罪傾向の進度,年齢等に応じて,特色のある覚せい剤濫用防止指導が実施されている。
 指導は,おおむね,4ないし6回に分けて実施され,一つの指導グループの受講者は6名ないし10名である。指導の内容は,薬理作用,薬物関係法規の解説,濫用の弊害,薬物体験に関する討議,断絶の具体策,出所後の生活設計等である。
 指導においては,受講者が覚せい剤の害悪を認識し,覚せい剤をやめると表明するところで終わるのではなく,これまでの自分を率直に見詰め,出所後の生活の困難さを理解し,他の受講者の失敗体験から学び,真剣に悩む段階を経ることによって,覚せい剤と決別した生活を始める意思と自信を堅固にすることができるよう指導している。
 教育方法として,視聴覚教材の活用,部外専門家による講話,集団討論及び個別的な面接指導が利用され,必要に応じ,作文,読書指導,ロールプレイング,ロールレタリング等も行われる。
 また,一般受刑者を対象とする,覚せい剤の害悪についての啓発活動も,刑執行開始時指導,釈放前指導等の機会を利用したり,覚せい剤乱用防止月間の行事に取り入れたりするなど,活発に実施され,新たな覚せい剤犯罪を防止する上で効果を上げている。