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 平成 7年版 犯罪白書 第4編/第5章/第1節/1 

第5章 薬物犯罪と検察・裁判

第1節 検  察

1 検察庁における受理状況

 検察庁における戦後の薬物犯罪新規受理人員の推移を概観すると,まず,覚せい剤取締法違反については,昭和26年の覚せい剤取締法制定以後,受理人員の激増が続き,29年には新規受理人員が5万2,820人に達したが,これをピークとして以後急激に減少し,31年には5,607人,32年には866人となり,40年代前半までは1,000人を下回ることが多かった。しかし,40年代後半から再び急激な増加を始め,49年だけは前年に比べて若干の減少を見たものの,50年以降は毎年増加を続けて57年には3万4,431人を数え,第二のピークを迎えた。それ以後は緩やかな減少傾向に転じ,平成2年には1万9,231人となったが,3年にやや増加してそのままほぼ横ばいの状態が続いている。6年の新規受理人員は前年より1,316人(6.2%)減少して2万79人となっている。
 これに対し,麻薬取締法違反の新規受理人員は,現行法が制定された昭和28年以降,多少の起伏はあるものの全体として増加傾向が続き,37年に3,093人とピークを迎えた。39年から減少傾向に転じ,58年の97人を底にして再び増加傾向を示し始めているが,41年以降受理人員1,000人未満の状態が続いている。平成6年の新規受理人員は,前年より33人(6.9%)減少して442人となっている。
 大麻取締法違反の新規受理人員は,多少の起伏はあるが,全体として見ると,戦後一貫して増加傾向にある。昭和37年まで100人未満の状態が続いたが,38年に100人を,51年に1,000人をそれぞれ超え,平成5年には2,000人台に達した。6年は,前年より132人(5.4%)減少して2,312人となっている。
 あへん法違反の新規受理人員は,昭和29年のあへん法制定以後,若干の起伏を示しつつ徐々に増加し,41年に995人とピークを迎えたが,その後減少傾向をたどり,63年以降平成4年までは100人未満の状態が続いた。5年に再び100人台に戻り,6年は前年より92人(76.0%)増加して213人となっている。
 毒劇法違反の新規受理人員については,同法においてシンナー等有機溶剤の濫用防止規定が設けられた昭和47年以降の統計を見ると,多少の起伏はあるが,同年以降おおむね増加を続け,ピーク時の58年には2万8,738人を数えた。ピーク時の高水準は平成3年まで続き,毎年2万人を超える新規受理人員があったが,近時減少する傾向にあって,4年からは1万人台となり,6年の新規受理人員は前年より2,078人(15.0%)減少して1万1,812人となっている。
 刑法第2編第14章のあへん煙に関する罪の新規受理人員は,昭和26年に16人であったが,以後は一けた台又は受理人員なしの年が続き,51年の1人を最後に,52年以降受理人員が全くない(巻末資料IV-2表参照)。
 昭和56年を基準とし,同年から平成6年までの間における薬物四法及び毒劇法各違反の検察庁新規受理人員の推移を指数で見たものがIV-15図である。

IV-15図 各種薬物犯罪の検察庁新規受理人員の推移(昭和56年〜平成6年)

 なお,平成4年7月1日から麻薬特例法が施行されたが,同法違反の受理人員は,4年が1人,5年が5人,6年が5人となっている。
 ちなみに,平成6年における交通関係業過及び道交違反を除く検察庁新規受理人員総数に占める薬物犯罪新規受理人員の比率を見ると,覚せい剤取締法違反が5.9%,麻薬取締法違反が0.1%,大麻取締法違反が0.7%,あへん法違反が0.1%,毒劇法違反が3.5%となっており,これを合計すると受理人員総数の1割を超えている(検察統計年報による。)。