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少年の薬物犯罪において,圧倒的多数を占めるのは,毒劇事犯であり,次いで,覚せい剤事犯である。
IV-8図は,毒劇法が改正され,シンナー等が法規制の対象となった昭和47年から平成6年までの間における少年による毒劇法違反送致人員及び少年比(送致人員総数に占める少年の比率)の推移を見たものである。少年による毒劇法違反送致人員は,昭和57年に2万9,254人とピークに達した後,引き続き2万人台で推移していたが,平成3年以降減少が続いており,6年には8,956人で,前年と比べ2,196人(19.7%)の減少であり,ピーク時の約3分の1となっている。6年の少年比は68.6%であり,この間の少年比は,3年以降減少傾向にあるが,ほぼ70%から85%を占め,毒劇法違反は少年に特徴的な薬物犯罪といえよう。 IV-8図 毒劇法違反の少年送致人員及び少年比の推移(昭和47年〜平成6年) 法務省矯正局の資料によると,平成6年に全国の少年鑑別所に入所した少年についてシンナー等の使用経験を見ると,経験者は,男子では50.1%,女子では66.6%となっている。少年による毒劇法違反送致人員がピークに達した昭和57年当時には,この数値は,男子では61.5%,女子では68.5%であったが,平成6年には男子で11.4ポイント減少したものの,女子ではほとんど変化はない。シンナー等有機溶剤は,薬物の中では入手が容易であるため,少年によって手軽に濫用されるおそれがあり,毒劇法違反送致人員が減少したといっても,まだシンナー等有機溶剤に起因する事件や事故は発生している。警察庁生活安全局の資料によると,平成6年におけるシンナー等有機溶剤の濫用に起因する少年の事故は,濫用死6人,交通事故4人である。 覚せい剤は,少年の薬物犯罪の中では,毒劇法違反に次いで検挙人員が多く,しかも,濫用者は,非行程度や暴力団とのかかわり等から問題の根深い者が多い。 IV-9図は,昭和45年から平成6年までの間における少年による覚せい剤事犯検挙人員及び少年比(検挙人員総数に占める少年の比率)の推移を見たものである。少年による覚せい剤事犯は,昭和57年の2,769人をピークとしてその後減少したが,平成3年,4年と増加した後,再び減少している。6年の検挙人員は832人で,前年と比べ154人(15.6%)減少している。また,6年の少年比は,5.6%である。 IV-9図 覚せい剤事犯の少年検挙人員及び少年比の推移(昭和45年〜平成6年) IV-10図は,昭和45年から平成6年までの間における麻薬等事犯の少年検挙人員の推移を見たものである。麻薬取締法違反の少年検挙人員は,昭和48年の98人をピークに減少し,以後低い水準にとどまっている。平成6年の検挙人員は18人であり,前年と比べ3人(20.0%)の増加となっている。 あへん法違反の少年検挙人員は,1人から3人の間で推移し,検挙者のいない年もある。平成6年には,検挙人員3人で,前年と比べ2人(200.0%)の増加である。 大麻取締法違反の少年検挙人員は,昭和53年に209人とピークに達した後減少していたが,60年の77人を底として,近年再び増加し,平成6年には,検挙人員303人で前年と比べ52人(20.7%)の増加となり,過去最高に達している。 IV-10図 麻薬等事犯の少年検挙人員の推移(昭和45年〜平成6年) また,平成6年における薬物事犯検挙人員の少年比を見ると,大麻事犯14.4%,覚せい剤事犯5.6%,麻薬事犯5,2%及びあへん事犯1.4%である。このように,少年の薬物犯罪では,近年大麻取締法違反の検挙人員の増加傾向が顕著である。また,検挙人員及び少年比から見ると,少年の薬物犯罪の中で,大麻の占める位置は,シンナー等有機溶剤及び覚せい剤に次いで大きいといえよう。 |