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 平成 7年版 犯罪白書 第4編/第4章/第1節/2 

2 覚せい剤事犯

 警察庁生活安全局の資料によると,平成6年における覚せい剤事犯の検挙状況から見て特に注目されるのは,[1]水際検挙による覚せい剤の大量押収があったこと,[2]暴力団勢力(暴力団の構成員及び準構成員)の関与度が依然高く,検挙人員の4割以上を占めること,[3]来日外国人による事犯が増加していることである。
 平成6年における覚せい剤1kg以上の大量押収事犯は,10件(押収量合計288.0kg。総押収量の91.9%に相当)である。これを供給地別に見ると,中国2件(154.5kg),タイ1件(1.9kg),供給地不明7件(131.7kg)となっている。,

IV-5図 覚せい剤密輸入の供給地別押収量構成比(平成2年〜6年の累計)

 覚せい剤1kg以上の大量密輸入事犯は,その供給地が不明なものが多く,年次による変化も大きいので,最近5年間の累計により供給地別押収量の構成比を見ると,IV-5図のとおり,台湾が50.1%で最も多く,次いで,中国20.8%,香港5.0%などとなっている。
 厚生省薬務局の資料によると,平成6年における覚せい剤事犯の検挙人員は,1万4,896人であり,前年と比べ599人(3.9%)の減少となっている。
 覚せい剤事犯の都道府県別検挙人員を見ると,東京が2,075人で最も多く,次いで,大阪が1,625人,神奈川が1,004人,福岡が902人,以下,北海道,愛知,埼玉,千葉,静岡の順となっているが,地域による人口差を考慮し,都道府県別検挙人員の人口10万人当たりの比率(人口比)を見たのがIV-6図である。人口比の全国平均は11.9であるが,和歌山県が24.8で最も高く,島根県が1.3で最も低い。平均を超える地域は,18都道府県にわたるが,上位10県を挙げると,和歌山を筆頭に,以下,香川(20.5),京都(20.4),大阪(18.7),福岡(18.4),東京(17.6),佐賀・愛媛・奈良・山梨(各16.1)の順であり,覚せい剤の汚染が大都市地域に限らず,全国的に広がっていることがうかがえる。

IV-6図 覚せい剤事犯検挙人員の都道府県別人口比(平成6年)

IV-7図 覚せい剤事犯検挙人の年齢層別構成比(平成6年)

 警察庁生活安全局の資料によると,平成6年に覚せい剤に起因する犯罪により検挙された者は143人で,前年と比べ65人(31.3%)減少したものの,内容的には窃盗のほか,銃刀法違又,傷害,強盗等が多くなっている。また,同年に覚せい剤に起因する事故を起こした者は,濫用死20人,交通事故17人,自傷8人,自殺2人の合計47人で,薬物濫用による死亡,交通事故等が後を絶たない。
 厚生省薬務局の資料により,平成6年における覚せい剤事犯検挙人員の年齢層別構成比を見ると,IV-7図のとおり,20歳代の者が39.8%で最も多く,以下,30歳代の25.6%,40歳代の19.3%,50歳以上の9.8%,19歳以下の5.6%となっている。30歳未満の若い年齢層は6,762人で,前年と比べ312人(4.4%)減少している。
 警察庁生活安全局の資料によれば,平成6年における来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員は338人であり,前年と比べ50人(17.4%)の増加である。