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現在,国際条約等によって世界で規制の対象となっている薬物は,あへん,ヘロイン,大麻,コカイン,向精神薬等であるが,薬物濫用問題の国際的動向を理解するために,まず,世界の規制対象薬物の主要な供給地(生産地),規制対象薬物の押収量及び押収地域について概観する。
1968年に発足した国連の国際麻薬統制委員会(InternationaL NarcoticsControLBoard)の1992年の報告によると,世界の規制対象薬物の主要な供給地は,IV-1図に示すように,薬物の種類によって異なるが,ヘロインは,黄金の三角地帯(ゴールデン・トライアングル)といわれる地域を含むミャンマー,ラオス及びタイ並びに黄金の三日月地帯(ゴールデン・タレセント)といわれる地域を含むイラン,アフガニスタン,パキスタンなどを中心に,レバノン,メキシコなどであり,コカインは,南米のエクアドル,ペルー,ボリヴイア,コロンビアなどであり,大麻は,アメリカ,プエルトリコ,ジャマイカ,ベリーズなどとなっている。南米諸国はコカの生産地として知られているが,コロンビアは,近年,大麻の供給地としても目立ってきている。 IV-1図 世界の規制対象薬物の主要な供給地(生産地) 各地で不正に栽培され又は密造された規制対象薬物は,原料のままあるいは固形・粉末・ねりもの状へと形を変え,世界の国々へ広がっている。1993年の国連統計によると,世界の規制対象薬物の押収量は,大麻(大麻草・乾燥大麻)が527万2,867kg(日本は646kg)で最も多く,以下,大麻樹脂85万2,333kg(同30kg),コカイン26万9,054kg(同26kg),あへん8万5,949kg(同13kg),ヘロイン2万6,852kg(同15kg)などとなっている。規制対象薬物の押収量の多い国名を見ると,大麻は,南アフリカ,コロンビア,メキシコ,アメリカなど,大麻樹脂はパキスタン,スペイン,モロッコ,カナダなど,コカインはアメリカ,メキシコ,コロンビアなど,あへんはイラン,パキスタン,中国など,ヘロインは中国,パキスタン,タイなどとなっており,我が国における規制対象薬物の押収量は,世界の中ではまだ少ないものの,次第にその量は増加しつつある。 我が国において濫用される薬物は,覚せい剤が最も多く,最近では大麻の増加も目立っている。その密輸入の主な経路を見ると,覚せい剤は台湾から,大麻はアメリカ,フィリピン,タイ及びミャンマーから,コカインはアメリカ及びコロンビアからとなっており,これら薬物の供給阻止が最も重要な問題となっている。 |