第2章 暴力団犯罪
第1節 概 説
1 暴力団対策法 平成3年5月15日,暴力団員の行う暴力的要求行為等について必要な規制を行い,暴力団の対立抗争等による市民生活に対する危険を防止するために必要な措置を講ずること等により,市民生活の安全と平穏の確保を図ることを目的として,「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(以下,本章において「暴力団対策法」という。)が公布され,4年3月1日に施行された(5年5月12日一部改正)。これを機に,暴力団を社会から追放しようという様々な活動が活発化した。 暴力団対策法の施行後,平成4年に,広域暴力団(2以上の都道府県にわたって組織を有する暴力団をいう。)のうち,特に悪質かつ大規模な広域暴力団で,警察庁が集中取締りの対象としている山口組,稲川会及び住吉会の3団体をはじめとする15団体が,暴力団対策法の規定に基づき指定暴力団として指定された。5年には,7団体が指定され,6年には,松葉会等新たに3団体が指定され,全国の暴力団構成員約4万8,000人の約87.7%が暴力団対策法の規制の対象となった(警察庁刑事局の資料による。)。 平成6年は,企業の幹部等に対する襲撃等が発生し,また,北九州地区における連続発砲などのけん銃事件が相次いだ。また,近年,暴力団が自ら支配する企業の活動を通じて,多額の資金を獲得している実態が明らかになっているが,6年も,暴力団フロント企業に係る犯罪や暴力団傘下の総会屋グループによる犯罪の検挙が大幅に増加している。 警察庁刑事局の資料によると,平成6年には1,057件の中止命令(暴力的要求行為等を行った指定暴力団員に対し公安委員会が当該行為の中止を命ずること。)が発出され,4年の暴力団対策法施行以降発出された中止命令は1,908件に上っている。6年の中止命令を形態別に見ると,資金獲得活動である暴力的要求行為に対するものが613件(58.0%),脱退妨害・加入強要に対するものが405件(38.3%)である。団体別では,山口組に対するものが469件,稲川会に対するものが169件,住吉会に対するものが149件となっており,これら3団体に対する中止命令件数が全体の74.5%を占めている。 なお,平成6年の再発防止命令(公安委員会が,暴力的要求行為等を行った指定暴力団員に対し,当該行為と類似の行為の再発防止のため,必要な事項を命ずること。)の件数は37件である。 暴力団の解散・壊滅は,平成3年には131組織(構成員数1,430人),4年には158組織(同2,051人),5年には222組織(同2,604人)となっている。 暴力団対策法の成立・施行を契機とする警察の取締りの強化及び国民の暴力追放運動の盛り上がりによって暴力団の資金獲得活動が困難となったことなどにより,暴力団の解散・壊滅が増加している状況がうかがわれる。平成6年の暴力団の解散・壊滅は,211組織(同1,940人)であり,前年と比べ11組織(5.0%),構成員数にして664人(25.5%)減少した。
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