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1 捜査共助等 (1) 我が国から外国に対する捜査共助等の要請
我が国の刑事事件の捜査(公判における補充捜査を含む。)に必要な証拠の収集について外国に共助を求める場合,検察庁又は警察等が外交ルートを通じてこれを行っている。 検察庁の依頼によって共助の要請をする場合は,通常,検察庁→法務省→外務省→在外日本公館→相手国の外務省という経路をたどり,警察の依頼による場合には,通常,都道府県警察→警察庁→外務省→在外日本公館→相手国の外務省という経路をたどり,それぞれ,当該外国の司法当局等がこれを実施することとなる。 また,外国等に対して刑事事件の捜査に必要な情報や資料の提供等の協力を求める方法としては,国際刑事警察機構(ICPO)ルートによる方法もある。この場合は,一般に,各都道府県警察の協力の依頼が,ICPOの我が国における国家中央事務局である警察庁を通じてICPOに加盟している外国の警察に伝達され,当該警察において処理されることとなる。 II-59図によって,最近10年間において,検察庁の依頼により我が国から外国に対して,外交ルートによって要請した捜査共助について見ると,嘱託件数は合計で69件,相手国(地域を含む。以下,本章において同じ。)は16か国となっており,嘱託件数,相手国数共に増加傾向にある。相手国はアメリカが最も多く,総数69件中の33件と約半数を占めている。もっとも,近年,タイ,韓国,フィリピン等のアジア諸国を相手国とするものが増加している(巻末資料II-18表参照)。 II-59図 捜査共助件数の推移(昭和60年〜平成6年) 平成6年中に,検察庁の依頼により我が国から捜査共助の要請をした相手国は,アメリカ,連合王国,香港,オーストラリア,タイ,韓国,フィリピン及びブラジルの8か国となっており,証拠物の提供,関係者の供述調書の作成及び証人尋問の実施の依頼等合計17件の捜査共助の要請をし,このうち8件については,回答を受けている。検察庁の依頼による我が国からの捜査共助の嘱託事件のうち,外国人被疑者に係る事件についての,この10年間における嘱託件数を見ると,昭和61年2件,平成元年2件,2年1件,3年3件,4年2件,5年3件,6年3件となっている(法務省刑事局の資料による。)。 なお,このほか,警察の依頼により我が国から外国に対して,外交ルートによって行った捜査共助の要請を最近2年間について見ると,平成5年6件,6年8件となっている(警察庁からの回答による。)。 (2) 外国から我が国に対する捜査共助等の要請 外国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供等について,我が国が外国から協力を求められた場合については,国際捜査共助法(昭和55年法律第69号)に規定があり,外国から証拠の提供の要請を受けた場合とICPOから協力の要請を受けた場合について,それぞれの手続が定められている。 外国から刑事事件の捜査に必要な証拠の提供の要請があった場合は,同法1条ないし16条にその手続等が定められている。この場合には,法務大臣は, [1] 政治犯罪でないこと [2] 捜査の対象となっている行為が日本国内で行われたとした場合,我が国の法令上犯罪に当たるものであること [3] 相互主義の保証の下で要請されたものであること [4] 証人尋問又は証拠物の提供の要請の場合には,その証拠が必要不可欠であること 等の要件に該当するか否かを判断した上,要請に応ずることが相当であると認めた場合,地方検察庁の検事正,国家公安委員会,海上保安庁長官等に対して,関係書類を送付する。この場合,検察官又は司法警察員は,共助に必要な証拠の収集に関し,関係人の出頭を求めてこれを取り調べ,鑑定を嘱託し,実況見分をし,書類その他の物の所有者,所持者若しくは保管者にその物の提出を求め,又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるほか,必要があると認めるときは,裁判官の発する令状により,差押え,捜索又は検証をすることができる。また,検察官は,裁判官に証人尋問を請求することができる。収集された証拠は,法務大臣に送付される。 一方,ICPOから,国家公安委員会が外国の刑事事件の捜査について協力の要請を受けた場合については,同法17条に手続等が定められており,国家公安委員会は,相当と認める都道府県警察に必要な調査を指示するなどし,警察官等は,この調査に関し,関係人に質問し,実況見分をし,書類その他の物の所有者,所持者若しくは保管者にその物の提示を求め,又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができることとされている。 II-59図によって,最近10年間における,外交ルートによる外国からの我が国に対する捜査共助要請の受託状況について見ると,受託件数は合計で164件,要請国は21か国となっている。要請国がアメリカであるものが最も多く,164件中の82件と半数を占めている。しかし,近年,中国,韓国,オーストラリア等のアジア・太平洋諸国及び連合王国等のヨーロッパ諸国からの要請が増加している(巻末資料II-19表参照)。 平成6年中には,アメリカ,連合王国,ドイツ,スウェ-デン,オランダ,中国及び韓国から,証拠物の提供,関係者の供述調書の作成及び証人尋問の実施の依頼等合計20件の捜査共助の要請を受けており,このうち13件については,既に捜査共助を実施し,要請国に回答済みである。 我が国が受託した外国からの捜査共助要請についての,法務大臣による関係書類送付件数の推移を送付先別に見ると,以前は警察庁を送付先とする件数が多かったが,平成2年以降は検察庁を送付先とする場合が多くなっている。平成6年においては,送付先を警察庁とするものが11件,検察庁とするものが13件であった(法務省刑事局の資料による。なお,巻末資料II-20表参照)。 |