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 平成 7年版 犯罪白書 第2編/第3章/第4節/2 

2 民間協力

(1) 篤志面接及び宗教教誨
 矯正施設の処遇は,教科教育,生活指導等多くの場面で民間篤志家の協力を得て行われている。ここでは,そのうち篤志面接及び宗教教誨について述べる。
ア 篤志面接
 篤志面接は,個々の受刑者や少年院在院者が抱えている精神的悩みや,家庭,職業,将来の生活計画等の問題について,民間篤志家である篤志面接委員の助言指導を求めて,その解決を図ろうとするもので,昭和28年に発足し,以来,年々活発となり,重要な処遇手段の一つとして定着している。篤志面接委員は,学識経験者,宗教家,更生保護関係者等の中から,矯正施設の長が推薦し,矯正管区長が委嘱するものであり,任期は2年で,再委嘱を妨げない。
 平成6年12月31日現在における篤志面接委員数は,II-34表のとおりであり,6年における篤志面接相談内容別実施回数は,II-35表のとおりである。
 篤志面接委員相互の研さんをより深め,連帯をより強化して篤志面接活動の一層の充実を期するため,各施設単位,各矯正管区単位及び全国的規模で,講演,協議,研究発表,事例研究等を内容とする積極的な研さん活動が続けられており,また,篤志面接活動の充実を図るため,全国組織として財団法人「全国篤志面接委員連盟」が結成されている。

II-34表 篤志面接委員数(平成6年12月31日現在)

II-35表 篤志面接相談内容別実施回数(平成6年)

イ 宗教教誨
 宗教教誨は,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者の宗教的要求を充足し,宗教的自由を保障するために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)に上り実施されている。宗教教誨は,受刑者や少年院在院者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を養うとともに,心情の安定を図り,進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。
 平成6年12月31日現在における教誨師数及び6年の宗教教誨の実施状況は,II-36表のとおりである。
 教誨師が正式に制度化されたのは,明治14年の監獄則改正のときで,以来,日本国憲法制定までの間は,官吏の身分を有する教誨師が施設に常駐していたが,その後は民間の篤志宗教家が教誨師として活躍している。教誨師の組織である教誨師会は,施設単位,都道府県単位,各矯正管区単位で設けられており,さらに全国単位として,財団法人「全国教誨師連盟」がある。

II-36表 教誨師数及び宗教教誨実施状況

(2) 民間協力組織等
 犯罪者や非行少年の改善更生と円滑な社会復帰を図る更生保護の諸活動は,地域社会の理解と協力を得なければ,十分な効果を上げることが困難である。我が国では,更生保護の諸活動に対して,積極的に参加・協力している民間篤志家が少なくなく,自主的に組織を結成しているものもある。
 主な協力組織等の概況は,次のとおりである。
ア BBS会
 BBS会は,非行少年の良い「ともだち」となり,その兄や姉の立場に立ってその立ち直りを助けるとともに,犯罪や非行のない地域社会を目指して非行防止活動を行う青年の民間団体であり,この趣旨に賛同する青年であれば,だれでも参加できる。BBSとは,Big Brothers and Sisters Movementの略語であるが,我が国においては,アメリカ合衆国の先例を参考として,昭和22年に京都の学生によって始められ,25年には全国組織として全国BBS運動団体連絡協議会が結成されたが,27年に「日本BBS連盟」と改称され,今日に至っている。
 BBS会の活動目標の一つである更生援助活動は,主として,保護観察所の依頼に基づいて行う「ともだち活動」であるが,このほかにも,児童相談所,家庭裁判所,警察,学校等から依頼を受けて,「ともだち活動」を行っている。なお,地域によっては,少年院在院中の少年たちと積極的な交歓・交流を図ったりしている。もう一つの活動目標である非行防止活動については,地域住民に対する普及・広報活動や環境浄化活動のほか,キャンプやレクリエーションなどを通じて,非行少年に限らず,地域の少年全般に働き掛ける活動を行っている。
 BBS会の組織は,市区町村等の地域を単位として結成されている地区B BS会が基礎となっているが,平成7年4月1日現在,地区会の数は561で,会員数は6,230人である。同日現在,保護観察所等から依頼を受けて行う「ともだち活動」の対象少年の数は277人である。
イ 更生保護婦人会
 更生保護婦人会は,女性の立場から,地域社会の犯罪予防と犯罪者や非行少年の更生に協力することを目的とする女性の民間団体である。その趣旨に賛同する女性であれば,だれでも参加できる。昭和24年に犯罪者予防更生法が施行された後,市区町村等の地域を単位に地区会が組織されるとともに,県単位,地方ブロック単位の組織化が進み,39年には全国組織として全国更生保護婦人協議会が結成されたが,その後44年に「全国更生保護婦人連盟」と改称され,今日に至っている。
 更生保護婦人会は,更生保護思想の普及活動,犯罪予防活動,保護観察対象者に対する援助活動,更生保護会在会者等に対する援助金品の贈呈・激励活動,保護司活動及びBBS活動に対する協力活動,矯正施設の被収容者等に対する援助活動,関係機関・団体の行事に対する協力・参加等,多彩な活動を展開している。近年では,犯罪予防活動の一環として,「ミニ集会」と称する小人数の住民集会を多く開催し,成果を上げている。
 平成7年4月1日現在,地区会数は1,238,会員数は19万7,533人である。
ウ 協力雇用主
 保護観察対象者等の中には,犯罪や非行の前歴を有するという社会的負因に加えて,資質や環境に恵まれないという個人的負因を持つものも少なくないところから,定職を得ることが必ずしも容易ではなく,このことによって更生が妨げられることが多い。このような保護観察対象者等に対して,犯罪や非行の前歴を承知の上で雇用し,その改善更生に協力しようというのが民間の協力雇用主である。協力雇用主は,もともと保護司や更生保護会が,知人の事業家に対象者の就職について協力を求めたことに始まったものである。その後,保護観察所,保護司組織,更生保護会等が協力者を求め,一部には,「協力雇用主会」などの名称の下に組織化されているところもある。
 平成7年4月1日現在,協力雇用主の数は,個人と法人を合わせて4,250であり,被雇用者の数は855人である。協力雇用主を業種別に見ると,同日現在,建設業の41.5%が最も多く,以下,製造業17.8%,サービス業11.0%の順であり,これらで約70.3%を占めている。