第4節 矯正・更生保護の連携と民間協力
1 矯正・更生保護の連携 矯正と更生保護は,施設内処遇と社会内処遇という犯罪者・非行少年処遇の異なる分野をそれぞれ担当しているが,その目指すところは犯罪者・非行少年の改善更生と円滑な社会復帰にあり,その共通の目標を達成するために様々な相互の連携が行われている。ここでは,そのうち仮出獄者に対する釈放前の指導及び援助(以下「釈放前指導等」という。)及び施設駐在官制度について述べる。 (1) 仮出獄者に対する釈放前指導等 仮出獄が許可され,釈放が見込まれている受刑者に対する釈放前指導等は,受刑者の社会復帰を円滑に行わせるために,矯正施設において,釈放間近に一定期間実施されている。 釈放前指導等は,受刑者処遇の総仕上げとしての意味をもち,社会情勢,釈放に関する諸手続,更生保護,職業安定所,社会福祉等に関する説明,釈放後の生活計画に関する助言・指導,釈放に当たっての心身の調整等,釈放後,社会生活への円滑な移行に役立たせるためのプログラムが準備されている。また,受刑者の自立心をかん養するために,できる限り社会生活に近い環境と開放的な雰囲気の中で,個々の対象者にふさわしい内容及び方法で計画的かつ組織的に行われている。 仮出獄により釈放される受刑者は,残刑期間が満了するまでの間,保護観察に付されることとなっており,施設内処遇から社会内処遇に移行されるところから,釈放前指導等において,対象者に保護観察制度その他更生保護に関する知識を付与するなど,更生保護との連携を強化する指導がなされるとともに,更生保護の分野からも釈放前指導等に対して協力がなされており,釈放前指導等の内容の充実が図られている。 釈放前指導等について,更生保護が行っている協力は,主として,保護観察所職員等の講師としての派遣,指導等の一環としての保護観察所等訪問の受入れなどである。法務省保護局の資料により,平成6年に,矯正施設が実施した釈放前指導等に対する保護観察所の協力状況を見ると,矯正施設に保護観察官を講師として派遣した回数は357回,保護観察所訪問の受入れ回数は331回であった。 なお,保護観察所訪問時には,カリキュラムが組まれ,保護観察官から仮釈放の意義,遵守事項,保護観察制度,更生保護会,保護司等についての講義も行われている。 (2) 施設駐在官制度 仮釈放準備調査を一層効果的に行うため,昭和56年10月から,規模の比較的大きな矯正施設に,地方更生保護委員会の保護観察官が常駐することとなった。その実施対象施設は,府中,横浜,大阪,京都,神戸,名古屋,広島,福岡,宮城及び札幌の計10か所の刑務所である。これらの矯正施設に駐在する保護観察官を,通常,施設駐在官と称している。 施設駐在官は,仮釈放準備調査に当たるほか,矯正施設が実施する受刑者の刑執行開始時の指導等や釈放前指導等への協力,矯正施設内の処遇に関する会議への参列,受刑者の環境調整のために行う家族やその他関係者との面接等にも従事しており,矯正と更生保護との連携を強め,施設内処遇から社会内処遇への一貫性を確保する上でも有効に機能している。法務省保護局の資料によると,平成6年に施設駐在官が面接した受刑者の延べ人員は3,603人,また,刑執行開始時の指導等及び釈放前指導等に対する協力回数は,それぞれ389回及び388回であった。
|