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 平成 6年版 犯罪白書 第4編/第5章/第3節/1 

1 F級受刑者の特質

 (1)調査時年齢
 調査時年齢別構成比を見ると,平成2年と5年の両年とも「25〜29歳」が最も高率であり,それぞれ約3割を占めている。平均年齢は,2年が34.1歳(男子33.9歳,女子36.3歳),5年が32.5歳(男子32.5歳,女子32.9歳)である。最年長者は,2年が69歳,5年が62歳,最年少者は,2年が18歳,5年が20歳である。
 (2)国   籍
 IV-17表は,国籍別人員を示すものである。国籍数は,平成2年の29か国から5年の39か国へと10か国増えている。人員が増加した国は,マレイシア(40人),イラン(39人),コロンビア(17人),中国(16人),フィリピン(13人)等である。地域別に見ると,アジア州の出身者が2年には79.4%,5年には75.0%を占めている。

IV-17表 国籍別人員

 (3)在留資格等
 犯行時における在留資格等は,平成2年には,観光目的等の「短期滞在」で適法に在留する者の構成比が61.4%で最も高かったが,5年には18.5%と42.9ポイント低下し,一方,「不法残留」が12.1%から41.7%へ,「不法入国又は不法上陸」が3.1%から19.4%へと,それぞれ上昇している。
 (4)罪   名
 IV-32図は,罪名別構成比を見たものである。刑法犯では,「強盗」及び「殺人」の凶悪犯が上昇し,「窃盗」及び「詐欺」の財産犯が低下している。特別法犯では,「麻薬取締法違反」が上昇し,「覚せい剤取締法違反」及び「大麻取締法違反」は低下しているが,薬物犯罪の占める比率(41.1%)は依然として大きい。

IV-32図 罪名別構成比

 (5)刑名・刑期
 刑名は,平成2年には全員が「懲役」であり,5年には「懲役」が371人,「禁錮」は1人のみである。
 刑期(言渡刑期)は,IV-18表に示すとおりである。5年を超える者の構成比は,平成5年では41.8%に上っているが,2年と比べると5.7ポイント低下している。

IV-18表 言渡刑期(懲役・禁錮)

 (6)犯行の動機
 IV-19表は,犯行の動機を見たものである。2年,5年共に,「利欲」の構成比が最も高い。「えん恨」,「酒に酔って」等の構成比はやや上昇し,「共犯者に誘われて」,「困窮・生活苦」,「利欲」等の構成比は低下している。特に,「共犯者に誘われて」の23.2ポイント低下が目立っている。
 (7)共犯者数
 IV-33図で見るとおり,「単独」が13.8ポイント上昇しており,「共犯者あり」の場合の構成比は低下している。

IV-19表 犯行の動機

IV-33図 共犯者数

 (8)被害者との関係
 「面識なし」が13.0%から28.5%へと15.5ポイント上昇し,「面識あり」の中では,「職場関係」が5.7ポイント上昇している。
 なお,被害弁償の状況を見ると,「全く未済」が20.2%から40.6%へと20.4ポイント上昇している。
 (9)使用言語
 IV-20表のとおり,使用言語は約20か国語にわたっている。

IV-20表 使用言語

 (10)来日目的
 IV-21表に見るとおり,来日目的では,「就労」が20.6%から50.5%へと29.9ポイント上昇し,「犯罪」は57.0%から37.6%へと19.4ポイント低下している。もっとも,犯罪目的で来日した者の実数は127人から140人へと13人増加している。5年の140人の罪名を見ると,麻薬取締法違反が47人(33.6%),覚せい剤取締法違反が32人(22.9%),大麻取締法違反が20人(14.3%)等となっている。

IV-21表  来日目的

 (11)信仰している宗教
 信仰している宗教が「ない」は20.2%から5.4%へと14.8ポイント,「仏教」は23.8%から16.4%へと7.4ポイント,それぞれ低下し,「キリスト教」は21.1%から30.1%へと9.0ポイント,「イスラム教」は10.3%から18.0%へと7.7ポイント,それぞれ上昇している。
 (12)語学能力
 IV-34図は,日本語,英語及び中国語についての語学能力を示したものである。日本語,英語及び中国語の3か国語がすべて「全くできない」者は,平成2年には,日常会話で10人,読み書きで19人であり,5年には,日常会話で24人,読み書きで61人である。

IV-34図 日本語・英語及び中国語の語学能力(平成5年)