前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 6年版 犯罪白書 第4編/第4章/第3節/3 

3 外国人被疑者・被告人に対する適正手続の実質的保障

 我が国刑事訴訟法上の被疑者・被告人の権利保障に係る規定は,日本人,外国人を問わず,等しく適用されるが,捜査段階においては,外国人被疑者に対する適正手続を実質的に保障する観点から,検察官により,外国人被疑者に対し,我が国の刑事手続の概要や権利の内容等について,必要に応じ,通訳人を介するなどして,その説明を行うなどの措置が講じられている。
 一方,裁判所においても,日本語を解さない外国人被告人の防御権を実質的に保障する観点から,[1]起訴状謄本の送達の際に,起訴がなされたことやその罪名,公判手続の概略等について説明した外国語の説明文を添付して送付する運用を可能とするため,そのサンプルを作成し,[2]弁護人選任照会書等の被告人等へ送付する定型的な書式について,その要旨の翻訳文を作成するなどの措置が講じられている。また,平成6年度(会計年度)中に,[3]被告人に対し,第1回公判期日前に,起訴状の概要の翻訳文を送付する運用を可能とするため,公訴事実の概要の翻訳例を作成することが予定されている。
 また,外国人被告人の防御権を実質的に保障するとともに,審理を促進する観点から,平成6年度中に,[4]一部の地方裁判所にワイヤレス通訳システムを導入することが予定されている。さらに,勾留質問手続における適正手続を保障する観点から,[5]勾留質問の際に,勾留質問の意義や要件,被疑者の権利等について説明した外国語の文書を提示する運用を可能とするため,そのサンプルを作成するほか,外国人被告人・被疑者に刑事裁判手続を理解させるため,[6]勾留質問手続及び公判手続の概要を説南した前記説明ビデオを作成するなどの方策が講じられている。