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 平成 6年版 犯罪白書 第3編/第6章/第2節/2 

2 経済事犯

 (1)証券取引法違反及び独占禁止法違反
 最近5年間における,証券取引法違反及び独占禁止法違反の,検察庁における新規受理人員の推移は,III-42図のとおりである。

III-42図 証券取引法違反及び独占禁止法違反の検察庁新規受理人員の推移

 証券取引法については,同法違反の新規受理人員こそ少ないものの,近時,罰則を含む同法の改正が相次いでいる。すなわち,昭和63年の改正においては,いわゆる「内部者取引」を規制する罰則が設けられ,平成2年の改正においては,株式の大量保有に関する情報の開示制度が創設され,3年の改正においては,損失補てん行為の処罰規定が整備された。また,4年の改正においては,独立した監視機構として新たに設置された証券取引等監視委員会に対して,国税反則取締法に規定する調査権限に準じた調査・告発権限を付与すること,一定の違反行為についての両罰規定中,法人の罰金刑の上限を・行為者に対する罰金の上限の額とは切り離して定め,3億円又は1億円と大幅に引き上げることなどを主たる内容とする改正がなされた。
 一方,平成2年に,いわゆる仕手グループによる相場操縦事件が摘発される(5年6月3日有罪判決確定)とともに,内部者取引事件が初めて摘発され(2年10月12日略式命令確定),3年には,東京証券取引所二部上場会社の役員による内部者取引事件が摘発され(4年10月10日有罪判決確定),5年には,東京証券取引所一部上場企業株の相場操縦事件につき,2個人が,証券取引等監視委員会からの告発に基づき,東京地方検察庁によって起訴された(現在公判係属中)。
 独占禁止法についても,近年,重要な改正がなされた。まず,平成3年の改正においては,不当な取引制限等を行った事業者等に対する課徴金の算定率が引き上げられ,,4年の改正においては,罰則が強化され,事業者による「私的独占」又は「不当な取引制限」等についての両罰規定中,法人等に対する罰金刑の上限の額が,行為者に対する罰金刑の上限の額とは切り離して定められ,1億円に引き上げられた。
 一方,公正取引委員会は,平成2年5月,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる慝質かつ重大な事案及び同委員会の行う行政処分によっては同法の目的が達成できないと考えられる事案について,今後は積極的に刑事処罰を求めて告発を行う旨の方針を決定した。
 その後,刑事罰の積極的活用の方針の下で,平成3年には,業務用ストレッチフィルム価格協定事件につき,8法人と15従業者が,同委員会からの告発に基づき,東京高等検察庁によって起訴され(5年6月5日有罪判決確定),また,5年には,社会保険庁発注の支払通知書等ちょう付用シールの入札談合事件につき,4法人が,同様に起訴された(5年12月29日有罪判決確定)。
 (2)無体財産権関係法令違反等
 最近5年間における,特許法,商標法及び著作権法各違反の,検察庁における新規受理人員の推移は,III-43図のとおりである。
 無体財産権関係法令違反の中では,,商標法違反と著作権法違反の新規受理人員が多い。商標法違反では,偽有名ブランド商品の販売事例が多数受理されており,著作権法違反では,アニメキャラクターの不正使用・販売事例やビデオソフトやコンピュータソフトの不正複製・販売事例等が見られる。
 その他の経済関係特別法犯の,最近10年間における検察庁新規受理人員の推移については,巻末資料I-6表参照。

III-43図 特許法・商標法及び著作権法各違反の検察庁新規受理人員の推移