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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第8章/第1節/4 

4 アメリカ

 1981年から1990年までの間のアメリカにおける交通事故の発生件数,死傷者数及び事故率は,IV-26表のとおりである。

IV-26表 交通事故の発生件数,死傷者数及び事故率アメリカ(1981年〜1990年)

 アメリカにおいては各州により,交通犯罪に関する規定や処理手続も相違しているが,ここではその一例として,ミシガン州及びカリフォルニア州を取り上げる。
 ミシガン州では,1979年施行の改正法により,交通法(Michigan Vehi-cle Code)違反行為は,重罪(felony),軽罪(misdemeanor)又は違反(civilinfraction)とされ,酒酔い運転等致死罪等が重罪,酒酔い運転等が軽罪とされたのに対し,速度違反,駐車違反等軽微な交通違反行為は,違反(civilinfraction)とされた。他に定めがない限り,重罪は,1年以上5年以下の拘禁刑若しくは500ドル以上5,000ドル以下の罰金又はその併科,軽罪は,100ドル以下の罰金若しくは90日以下の拘禁刑又はその併科と規定されている。他方,違反(civilinfraction)は,犯罪(crime)とはされず,拘禁刑を科することができず,制裁(civil sanction)として,制裁金(civil fine)を科することとされ,100ドル以下の制裁金及び費用(costs)を科するなどと規定されている。
 制裁金を科する手続は,交通違反を現認した警察官において,召喚状(citation)を作成して,違反者に交付する。
 違反者が,裁判所に自ら出頭し,又は手紙等により責任を認めた場合は,裁判所は,違反者に対して制裁金を科し,違反者が,裁判所に出頭するなどして,釈明の上で責任を認める場合は,違反者の釈明を考慮した後,制裁金を科する。
 他方,違反者が責任を否定する場合は,公式な審問手続を求めない限り,非公式な審問手続が行われ,また,公式な審問手続においては,自らの費用で弁護士を依頼できるが,陪審審理は行われない。その結果,証拠の優越により,違反が認められる場合は,制裁金の支払を命ぜられることになる。
 一方,カリフォルニア州においては,犯罪(crimesandpublicoffenses)は,重罪(felony),軽罪(misdemeanor)及び違反(infraction)に区分され,交通法(VehicleCode)により,交通違反行為は,救急車の窃盗等が重罪,酒酔い運転,無免許運転,無謀運転(recklessdriving),無謀運転致傷等が軽罪(misdemeanor)とされ,その他軽微な交通法違反行為が違反(infraction)とされている。重罪は,特に定めがある場合を除き,1,000ドル以上1万ドル以下の罰金若しくは州刑務所(stateprison)への拘禁刑又はその併科,軽罪は,特に定めがある場合を除き,1,000ドル以下の罰金若しくは6月以下の郡刑務所(countyjail)への拘禁刑又はその併科とする旨規定されている。他方,違反(infraction)については,拘禁刑を科することができず,別に定める場合を除き,初犯,累犯等の状況に応じて100ドル以下の罰金(fine)から250ドル以下の罰金を科するなどと規定されている。また,違反(infraction)については,陪審審理を受ける権利はなく,身柄拘束されている場合を除き,公費で弁護人を選任することはできないこととされている。
 1981-82年,1989-90年及び1990-91年の各会計年度におけるカリフォルニア州の市裁判所(municipalcourt)及び治安判事裁判所(justicecourt)における交通犯罪の処理状況は,IV-27表のとおりである。

IV-27表 市裁判所及び治安判事裁判所における交通犯罪の処理状況