交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年に対する処遇は,遵法精神のかん養と交通法規等の習得を目的として実施されているが,方法としては,保護観察所が作成した個別処遇手引書によるカリキュラム処遇が中心である。そのほか,そうした処遇との相乗的な効果をねらい,視聴覚教材を活用した講義,座談会,グループワーク等の集団処遇を併用しているところもある。なお,少年院仮退院者に対しても,保護観察処分少年に対するのとおおむね同様の処遇がなされている。
上記の個別処遇手引書は,担当保護司が指導のために使用する保護司用と,対象者自身が学習するために使用する対象者用とに分けられるが,ほとんどの庁において,いずれか又は両方の手引書が作成されている。これを活用し,対象者が手引書に記載されている6ないし12課程から成る学習コースを担当保護司の自宅等において終了すれば,おおよそ6か月で保護観察を解除することが,目標とされている。また,保護観察の期間中に再犯・再非行があった場合には,必要に応じて,保護観察官による個別指導が行われ,場合によっては,不良措置が検討される。
学習コースに盛り込まれる課題の概要は,次のとおりである。
- [1] 保護観察の導入
- 交通保護観察の目的を正しく理解させ,課題学習の進め方等について決める。
- [2] 違反・事故の責任
- 違反や事故を起こした場合に運転者が果たさなければならない様々な責任を理解させ,運転者の責任の重さを実感させる。
- [3] 交通関係法規について
- 交通ルールの必要性を理解させ,これを守っていく心構えを養う。
- [4] 安全運転の方法
- どのような状態のとき事故が起こりやすいか,運転者に望まれる生活態度は何かを考えさせる。
- [5] 運転免許制度
- 免許制度の意味を理解させるとともに,運転免許の取得を希望する者に対しては,計画を立てさせ,助言していく。
- [6] 車社会の一員としての自覚
- 死亡事故をゼロにするため,運転者として何ができるかを考えさせる。
交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年に対する集団処遇の実施状況(少年院仮退院者に対するものを含む。)は,平成4年において,実施庁14庁,実施回数176回,実施対象延人員3,558人であり,1回当たりの実施対象人員は20.2人となっている。