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 平成 5年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 終局裁判

(1) 第一審
 最近の10年間について,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所による,第一審裁判所としての終局裁判における処理人員を手続別に見ると,II-9図のとおりであり,圧倒的多数が略式手続によっていることが分かる。

II-9図 刑事第一審裁判所における手続別終局処理人員(昭和57年〜平成3年)

 次に,平成3年の地方裁判所・家庭裁判所による刑事第一審終局裁判の結果及び簡易裁判所による刑事第一審終局裁判の結果を,罪名別・判決主文別に見ると,II-4表及びII-5表のとおりである。地方裁判所の終局処分の中では,覚せい剤取締法違反が最も多く,以下,業過,道交違反,窃盗,傷害,詐欺の順となっている。
 なお,家庭裁判所の処理に係る少年に対する成人の刑事事件については,懲役・禁錮言渡し人員162人中の145人(89.5%)は児童福祉法違反によるもの,罰金・科料言渡し人員146人中の104人(71.2%)は労働基準法違反によるものである。また,簡易裁判所による略式手続による事件を罪名別に見ると,道交違反が最も多く,業過がこれに次いでいる。

II-4表 罪名別地方・家庭裁判所終局処理人員(平成3年)

II-5表 罪名別簡易裁判所終局処理人員(平成3年)

(2) 上訴審
 平成3年に言い渡された第一審判決に対する控訴率を見ると,地方裁判所の判決に対しては9.7%,簡易裁判所の判決に対しては4.8%となっている。3年の高等裁判所の控訴受理人員は4,706人で,これを控訴申立当事者別に見ると,被告人側のみの申立てによるものは98.2%,検察官のみの申立てによるものは1.2%,双方からの申立てによるものは0.6%である(司法統計年報による。)。
 II-6表は,平成3年に高等裁判所が控訴審として処理した結果を,罪名別に見たものである。終局処理人員総数4,762人のうち控訴棄却が最も多く3,097人(65.0%),破棄自判は811人(17.0%),取下げは827人(17.4%)である。罪名別の取下率は,公職選挙法違反,窃盗,覚せい剤取締法違反が高く,破棄自判の率は,業過,強姦・強制猥褻,詐欺が高い。破棄理由を見ると,破棄人員総数822人中205人(24.9%)は量刑不当によるものである。
 なお,検察統計年報によれば,検察官が第一審の無罪判決を不服として控訴した事件のうち,3年に14人の被告人に対し控訴審の裁判が行われているが,そのうち8人(57.1%)については,第一審判決が覆されて有罪となっている。
 平成3年に言い渡された控訴審の判決に対する上告率を見ると,全体では34.3%で,第一審判決に対する上訴率に比べると高くなっている。3年の最高裁判所の上告受理人員は1,318人であるが,そのうち検察官の申立てに係る者は2人である。3年に最高裁判所が上告審として終局処理した人員は,前年より97人減の1,349人で,その内訳は,上告取下げ221人(16.4%),上告棄却1,120人(83.0%),原判決破棄3人(0.2%)となっている(司法統計年報による。)。

II-6表 罪名別控訴審終局処理人員(平成3年)