公訴を提起するのは検察官である。検察官には,公訴の提起について広い裁量権がある。しかし,検察官が判断を誤り,起訴すべき事件を起訴しないという可能性もあり得ることから,告訴人等に対する救済の制度が法律上整備されている。これが,検察審査会に対する不服申立て及び管轄地方裁判所に対する付審判請求である。
検察審査会に対する不服申立て 検察審査会は,全国に常時約200か所設置されており,選挙人名簿を基にくじで選ばれた市民11人(任期6か月)の検察審査員をもって組織される。告訴人・告発人・請求人若しくは被害者の申立てにより又は職権で,検察官の不起訴処分の審査を行い,「起訴相当」,「不起訴不当」又は「不起訴相当」の議決を行う。この議決には法的拘束力はないが,起訴相当又は不起訴不当の議決があった場合,検事正は,議決を参考にし,公訴を提起すべきものと考えるときは,起訴の手続をしなければならない。
管轄地方裁判所に対する付審判請求 地方裁判所は,各種の職権濫用の罪について,告訴人・告発人から,検察官の不起訴処分に不服があるとして付審判の請求があった場合,その請求に理由があるときは,事件を裁判所の審判に付する旨の決定を行う。この決定により,公訴の提起があったものとみなされる。裁判所は,公訴の維持に当たる弁護士を指定し,検察官の職務を行わせる。
なお,法律上の救済制度ではないが,検察官が行った不起訴処分については,実務上,上級検察庁の長に対する不服申立てが認められており,上級検察庁がこれを受理した場合には,処分を再検討し,処理結果を不服申立人に通知している。