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2 女子少年の特質と意識 (1) 特別調査の概要
本項では,非行の傾向がいまだ深まっていない者として,保護観察処分少年(第3編第2章第6節参照)を,また,比較的非行の傾向が深まっている者として,少年院在院少年(第3編第2章第4節参照)を,それぞれ取り上げ,それらに対して同一の意識調査を実施し,その結果を基に,女子非行少年の特質を明らかにしようとするものである。 調査対象者は,保護観察処分少年については,平成3年12月2日現在,全国の保護観察所に保護観察処分少年として係属している者(交通事件による者を除く。)のうち,各保護観察所の平均年間受理数を基準とする比例配分により抽出された小年鑑別所収容歴のない女子229人,同じく男子212人,計441人(以下,それぞれ「観察女子」,「観察男子」と,また,両者を合わせて「観察少年」という。)である。少年院在院少年については,3年11月30日現在,全国の少年院在院者のうち,女子は9女子少年院在院者401人,男子は対象女子少年と処遇区分,処遇課程などをほぼ同じくする8男子少年院在院者546人,計947人(以下,それぞれ「収容女子」,「収容男子」と,また,両者を合わせて「収容少年」という。)である。 (2) 対象者の非行名及び問題行動歴 非行にかかわる意識を考察する前に,観察少年と収容少年との間で,処分を受ける原因となった非行(以下「本件非行」という。)や問題行動歴について,どのような差異が見られるかを概観する。 IV-44表は,調査対象者の本件非行について,男女別に見たものである。観察少年では,女子は薬物事犯,男子は窃盗犯がそれぞれ約半数を占めている。収容少年では,女子は薬物事犯の比率が最も高く,次いで虞犯となっているが,男子は窃盗犯の比率が最も高く,次いで粗暴犯となっている。女子は薬物事犯の比率が高いが,観察女子では毒劇法違反,収容女子では覚せい剤取締法違反の比率が高い。 IV-45表は,調査対象者の主要な問題行動歴について,「なし」,「数度以内」及び「常習」の三つに分けてその構成比を見たものである。観察少年の中には本件が初発非行(初めて補導,検挙された非行)の者も少なくないが,過去に種々の問題行動歴を有している者も相当数に上り,また,収容少年は観察少年に比べて問題行動歴を有している者が多く,かつ,常習化している者も多い。さらに,女子は,それぞれの男子に比べて無免許運転を除く項目において問題行動歴を有している者の比率が高く,それだけ非行の傾向が深まっていることをうかがわせる。 IV-44表 非行種別構成比 IV-45表 問題行動歴別構成比 (3) 女子少年の意識本項では,[1]非行の理由,[2]薬物濫用に対する意識,[3]加害・被害経験,[4]自己意識,及び[5]将来の見通し,のそれぞれについて,女子に焦点を当て,観察少年と収容少年との間に非行にかかわる意識にどのような差異が見られるかを中心に考察を行う。 ア 非行の理由 質問及び回答の形式は,非行の理由に関し選定した15項目それぞれについて,「あなたが今回事件を起こした理由は何ですか」と問い,「はい」又は「いいえ」のいずれかを選択するように回答を求めたものである。その回答結果(「はい」の占める比率)を見たのがIV-33図である。 まず,目に付くのは,観察少年,収容少年共に,怠惰で遊興的な生活習慣(「怠け癖や遊び癖がついていた」)や好奇心(「面白そうなことをしたかった」)を非行の理由として挙げる者が多いことであるが,男子がそれぞれの女子に比べて意志薄弱(「誘いを断れなかった」)や車に対する関心の強さ(「バイクや車に夢中に凭り過ぎた」),遊興費不足(「遊ぶ金に困っていた」),自己顕示(「目立ちたかった」)を理由とする者が多いのに対して,女子では,シンナー吸引,家族関係不良(「家が面白くなかった」),異性関係の失敗及び反抗(「親や大人に反発したかった」)を理由とする者がそれぞれの男子より多い。加えて,観察女子では,不就業,怠学を,収容女子では,暴力団との関係,覚せい剤の使用など反社会的集団との接触や影響を理由とする者が男子より多い。 IV-33図 非行の理由 また,別に求めた択一選択の結果から,非行の理由ないし原因として内的要因と外的要因のいずれに重きが置かれているかを見ると,怠惰で遊興的な生活習慣,激情(「かっとなってしまった」),意志薄弱,好奇心,反抗及び自己顕示といった自分自身の態度や感情などに非行の理由を求める者の比率が収容女子より観察女子の方が高い(観察女子50.7%,収容女子42.4%)のに対して,収容女子では,それ以外の自己を取り巻く環境や対人関係を理由とする者の比率の高いことが注目される。では,非行名の違いによって非行の理由には差異が見られるのであろうか。IV-46表は,本件非行名の中で観察女子,収容女子に比較的高い比率を占める薬物事犯,窃盗犯及び粗暴犯の3非行種別を取り上げ,選択率の高い順に上位5位までの非行の理由とその構成比を比較したものである。いずれの非行種別においても,怠惰で遊興的な生活習慣を非行の理由として挙げる者が多いものの,非行種別から見た非行の理由は,それぞれの非行を反映して異なっており,薬物事犯では,薬物し癖,不就労及び好奇心並びに収容女子の暴力団関係が,窃盗犯では,好奇心,家族関係不良及び不就労並びに収容女子の遊興費不足が,粗暴犯では,激情,好奇心などを理由とする者が多い。また,いずれの非行種別においても上位5位までの選歳率が観察女子より収容女子の方が高く,収容女子には種々の問題行動に対してかかわりの深いことがうかがわれる。 IV-46表 非行種別から見た非行の理由 イ 薬物濫用に対する意識(ア) 薬物濫用の理由 2の(2)の問題行動歴で触れたように,観察少年と収容少年とでは薬物濫用の実態には大きな差が認められ,収容少年は男女共に観察少年に比べて濫用経験のある者が多く,かつ薬物に依存ないしたん溺している常習者が多い。 以下,薬物濫用に至る理由について意識の比較を行う。 「人がシンナーを吸ったり,覚せい剤などの薬物を使用してしまうのはなぜだと思いますか」と問い,質問項目それぞれについて「はい」又は「いいえ」のいずれかを選択するように回答を求めた。質問項目はIV-34図に示した12項目であり,それぞれの結果(「はい」の選択率)を女子の選択率の高い順に示している。 観察少年,収容少年共に,人が薬物を濫用するのは,快楽追求(「気持ち良さを知りたい」)や好奇心(「面白そうに思える」),現実逃避(「嫌なことを忘れたい」)が理由であるとする者が多いが,男子がそれぞれの女子に比べて意志薄弱(「誘いを断れない」)を挙げる者が多いのに対して,女子は現実逃避や周囲の影響(「周りに使用していや人が多い」)を理由として挙げる者が多い。また,収容女子はいずれの項目においても観察女子より選択率が高いが,その中でも快楽追求や生活の乱れなどを理由とする者の比率の差が大きい。本設問は,直接本人の薬物濫用への理由や動機を聞いたのではなく,人が濫用に至る理由を一般的に問うたものであるが,それでは,薬物濫用に対する意識は濫用経験の有無で異なるであろうか。 IV-34図 薬物濫用に至る理由に関する意識 IV-47表 有機溶剤濫用の有無から見た薬物濫用に至る理由 IV-47表は,薬物濫用に至る理由を,女に限ってシンナー等有機溶剤の濫用経験の有無別に見たものである。これにより,濫用ありとした者となしとした者が,共に半数以上選択した項目を見ると,観察女子については,濫用ありの者はなしの者に比べて,快楽追求,好奇心及び周囲の影響の各項目の選択率は高いが,現実逃避の項目の選択率は低い。また,収容女子については,濫用ありの者はなしの者に比べて,好奇心,生活の乱れ及び周囲の影響の各項目の選択率が高く,意志の弱さを背景とする消極的な理由の項目(「止める人がいない」,「誘いを断れない」)の選択率が低い。以上から,薬物濫用に至った理由とするものは,その経験の有無で異なり,濫用経験者が意識している主要な理由は,快楽追求,好奇心,生活の乱れ,周囲の影響などであり,それらが自己の濫用経験に根ざしたものであることがうかがえる。 (イ) 薬物濫用の影響 では,薬物の濫用経験のある者はその影響をどのように感じているのであろうか。シンナーや覚せい剤濫用経験のある者に対して「シンナーや覚せい剤を使用することによって,どのような困ったことが起きたと思いますか」と問い,質問項目それぞれについて「はい」又は「いいえ」のいずれかを選択するように回答を求めた。その結果(「はい」と答えた者の比率)を示したのがIV-35図である。女子の方がそれぞれの男子より薬物の影響を強く受けていることがうかがわれ,特に生活が不規則になったことや体の不調を訴える者が多いことが分かる。また,非行の傾向が深まっている収容女子の方が観察女子よりもほとんどの項目において選択率が高く,薬物の影響をより強く受けていることが認められ,薬物濫用によりさい疑心が強まったこと,まともな友達が離れていったこと,けんか早くなったことなどを挙げる者が多い。 IV-35図 薬物濫用の影響に対する意識 ウ 加害・被害経験ここでは,対象少年が過去にどのような加害経験や被害経験を有していたのか,また,加害経験を有する者が,その同一行為の被害経験を過去にどの程度受けてきたのかなどについて見ることとする。 自転車盗,金品窃取,恐喝,いじめ及び家族・友達・他人に対する暴力行為の七つの犯罪行,為又は問題行動を取り上げ,それぞれについて「あなたは,今までに次のような経験をしたことがあり,ますか」及び「次のような被害に遭ったことがありますか」の加害・被害の両面から質問し,「はい」又は「いいえ」のいずれかを選択させた。IV-36図は,加害・被害別にその経験率(「はい」とする者の比率)を示したものである。 加害経験について見ると,収容少年の経験率がすべての項目において観察少年よりも著しく高く,収容女子では,[1]自転車盗,[2]友達への暴力,[3]恐喝の順で,観察女子では,[1]自転車盗,[2]友達への暴力,[3]家庭内暴力の順で経験率が高くなっており,これらの経験率は男子のそれより若干低いとはいえ,窃盗犯のみならず暴力行為においても,かなりの高さであることが注目される。また,観察少年,収容少年共に女子の家庭内暴力の経験率が男子のそれを上回っている。 次に,被害経験について見ると,収容少年の経験率がすべての項目において観察少年のそれを上回っており,観察女子,収容女子共に自転車盗,家庭内暴力,金品窃取の被害経験のある者が半数を超え,男子より被害経験の多いものには,観察女子では,家庭内暴力,金品窃枢,いじめがあり,収容女子では,家庭内暴力,いじめがある。 IV-36図 加害・被害経験のある者の割合 IV-37図 加害経験者中の同一被害経験のある者の割合 加害経験と被害経験との関連性を見るため,さきに挙げた七つの行為それぞれについて,加害経験のある者の中で加害行為と同一の被害を経験した者の割合を見たものがIV-37図である。観察少年,収容少年共に,自転車盗,家庭内暴力,金品窃取の項目で経験率が高くなっており,これらの被害経験と加害行為との間には強い閤連性があることが示唆される。女子は,家庭内暴力,いじめでそれぞれの男子より被害の経験率が高いのが注目され,また,いずれも収容女子の方が観察女子より被害の経験率が高い。なお,さきに挙げた七つの行為について,いくつの行為を経験しているかを観察女子と収容女子で比較したのがIV-38図である。加害行為数について見ると,観察女子は,経験なしが3割を占め,経験ある者においても一つか二つが約40%であるのに対して,収容女子では,経験なしがほとんどおらず,3人に1人は四つ以上となっている。一方,被害行為数では,観察女子は,経験なしが約1割で,経験ある者においても二つ以内の者が約半数を占めるのに対して,収容女子では,三つ以上の者が半数を超える。 IV-38図 女子少年の加害・被害行為の数 以上見てきたように,さきに挙げた犯罪行為や問題行動のいずれにおいても,収容女子は,被害経験率が観察女子より高く,また,その経験した行為の範囲が広いことから,被害経験は,非行の傾向を深めることと何らかの関連性を持っていることが推察される。エ 自己意識 非行の傾向の深まりに応じて,少年たちの自己意識はどのような変化を見せるのであろうか。本調査においては,平成2年版犯罪白書で使用された自己意識に関する12の質問項目を用い,それぞれの項目について,「あなたは,日ごろの生活で次のような感じになることがありますか」と問い,「よくある」,「ときどきある」,「あまりない」,「まったくない」の中から択一回答を求めた。これら12項目のうちから主な7項目を取り上げて「ある」(「ある」は,「よくある」と「ときどきある」の合計)の比率を一般少年(中学校,高等学校及び大学に在学していた生徒・学生,前調査の結果である。),観察少年,収容少年別に示したのがIV-39図である。非行の有無にかかわらず男子との比較において見られる女子の自己意識の特徴としては,「自分は頼りにされている」といった肯定的意識が認められるものの,「自分の性格が嫌になる」,「自分は何をやっても駄目な人間だ」といった自己嫌悪感や自信喪失の傾向がより強く認められることである。ほかにも,一般少年を別にすると,観察少年,収容少年共に女子が男子に比べて,「自分自身しか信ずるものがない」や「自分は世の中から取り残されている」といった孤立無援感や落ご感に陥っている者が多い。 また,一般少年,観察少年,収容少年の順で非行の深まりとともにその傾向が強まるもの(グラフの上から下へ順に比率が上昇しているもの)には,男子では,「世の中の人々が互いに助け合っている」といった肯定的意識が認められるのに対して,女子では,孤立無援感や落ご感などがあり,取り分け収容女子ではそのように感じている者が多いといえる。 IV-39図 自己意識 オ 将来の見通し最後に少年たちが将来に対してどのような見通しを持っているか,また,具体的にどのような心配や不安を持っているかを見てみよう。 IV-40図は,「あなたは,将来のことをどのように考えていますか。今の気持ちに合うものを一つだけ選んでください」と問い,「はっきりと将来のことを考えている」,「ばくぜんとではあるが将来のことを考えている」及び「あまり将来のことは考えていない」の中から選択し,択一で回答を求めたものである。 IV-40図将来の見通し これによると,「はっきりと将来のことを考えている」とする者の比率は,収容男子(34.1%),収容女子(26.9%),観察男子(21.2%),観察女子(15.9%)の順に高く,観察少年より収容少年の方が,また,女子より男子の方が,将来の見通しをはっきりと考えている傾向がうかがえる。では,少年たちは将来に対して具体的にどのような心配や不安を抱えているのだろうか。本調査では,将来の心配について11項目の質問をしている。質問及び回答の形式は,「あなたが将来の生活で心配に思っていることは何ですか」と問い,それぞれの項目について「はい」又は「いいえ」のいずれかを選択するように回答を求めた。その結果(「はい」の占める比率)を見たのがIV-41図である。まず,観察少年について見ると,男女共に半数を超える者が選択している項目はなく,総じて収容少年と比較すると将来の生活について心配すると回答する者は少ない。その中,でも選択率の比較的高いものを挙げると,女子では,「お金がないこと」,「仕事に就けるかどうか」,男子では,「お金がないこと」,「処分を受けたことが不利になるかどうか」などどなっている。次に,選択率の差に注目すると,女子は,「仕事に就けるかどうか」,「異性との関係」などが男子より選択率がやや高いが,男子は,「変な目でみられないか」,「処分を受けたことが不利になるか」などが女子より選択率が高い。 このように観察少年においては,男女共に経済的不安を心配なこととして挙げる者が比較的多いが,加えて男子が処分や非行が将来の生活に及ぼす影響をより強く心配するのに対して,女子は就職にかかわることを心配している。 一方,収容少年を見ると,女子では,[1]「友達との付き合い」,[2]「家族とうまくやっていけるか」,[3]「仕事に就けるかどうか」,[4]「異性との関係」の順に選択率が高く,男子では,[1]「友達との付き合い」,[2]「変な目で見られないか」,[3]「お金がないこと」の順に高い。次に選択率の差に注目すると,女子は,「家族とうまくやっていけるか」,「異性との関係」,「仕事に就けるかどうか」などを心配する者が男子より選択率が高く,男子は,「変な目で見られないか」,「お金がないこと」などを心配する者が女子よりやや高い。 収容少年においては,男女共に友達との交際を心配する者が比較的多いが,加えて男子が非行にかかわる影響や経済的不安を挙げているのに対して,女子は家族との関係や異性関係といった人間関係及び就職にかかわるものを心配している。 IV-41図 将来の生活に対する不安 (4) まとめ本調査は,全国的な規模において,社会内処遇を受けている者(保護観察処分少年)と施設内処遇を受けている者(少年院在院少年)に対し,保護と矯正が連携して同一の意識調査を実施したものである。この調査によって,非行の理由,薬物濫用に対する意識,加害・被害経験,自己意識,将来の見通しなどについて,女子の特質と意識は男子のそれと明らかに異なっており,特に,女子は,男子に比べて種々の問題を抱え,これが意識に反映し,また,女子の中でも収容少年が観察少年に比べてその傾向が強いことが確認された。以下,調査の結果から得られた女子少年の特質について述べる。 ア 非行の理由ないし原因 [1] 男女共に非行の理由として,自己の怠惰で遊興的な生活習慣や「面白そうなことをしたかった」といった好奇心を挙げる者が多い。 [2] 男子が意志薄弱(「誘いを断れなかった」)や遊興費不足,車に対する関心の強さを理由としているのに対して,女子はシンナー吸引,家族関係不良,異性関係の失敗などを理由として挙げている。 [3] 観察女子は,自分自身の態度や感情の問題が非行の理由であるとする者が多いのに対レて,収容女子は自分を取り巻く環境や対人関係などの外的要因を理由とする者が多い。 イ 薬物濫用に対する認識 [1] 男女共に,人が薬物濫用に至るのは,快楽追求(「気持ち良さを知りたい」),好奇心(「面白そうに思える」),現実逃避(「嫌なことを忘れたい」)が主要な理由であるとする者が多い。 [2] 男子が意志薄弱(「誘いを断れない」)を理由として挙げる者が多いのに対して,女子は現実逃避や周囲の影響(「周りに使用している人が多い」)を挙げる者が多い。 [3] 女子は,薬物濫用の実態を反映して男子より薬物の影響を強く受けていることがうかがわれ,生活が不規則になったことや体の不調を訴える者が多い。 ウ 過去における加害・被害経験 [1] 男女共に加害・被害のいずれも収容少年の方が観察少年より経験している者の割合が高い。 [2] 女子は,加害経験では家庭内暴力,被害経験では家庭内暴力,いじめを経験している者の割合が男子より高い。 [3] それぞれの行為における加害経験者の中に占める被害経験者の割合は,いずれも収容女子の方が観察女子より高く,また,被害経験の範囲が広く,被害経験は,非行の傾向を深めることと何らかの関連性を持っていることが推察される。 エ 自己意識 [1] 一般女子も非行女子も男子と比べて,自己嫌悪感(「自分の性格が嫌になる」)を持ち,自信を喪失している(「自分は何をやっても駄目な人間だ」)とする者が,多い。 [2] 一般少年,観察少年,収容少年の順で,非行の深まりとともにその傾向が強まるものには,女子では,「自分自身しか信ずるものがない」,「自分は世の中から取り残されている」といった孤立無援感や落ご感などがあり,特に収容女子ではそのように感じている者が多い。 オ 将来の見通し [1] 女子は,はっきりと将来のことを考えているとする者は男子に比べて少なく,将来の見通しに欠ける者が多い。 [2] 観察少年は,将来の心配として,男女共に経済的不安を挙げる者が多いが,男子が処分や非行が将来の生活に及ぼす影響を心配しているのに対して女子は就職などにかかわるものを心配している。 [3] 一方,収容少年は,男女共に友達との交際を心配する者が多いが,男子が非行にかかわる影響や経済的不安を挙げているのに対して,女子は家族との関係や異性関係といった人間関係及び就職にかかわるものを心配している。 |