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1 女子犯罪の特質 (1) 年齢層別に見た特徴
IV-3図は,昭和41年以降の交通関係業過を除く刑法犯検挙人員の年齢層別構成比を男女別に示したものである。41年以降の推移を見ると,男女共に,少年比の上昇傾向が顕著な特徴となっているが,女子の41年と平成3年を比べると,少年は25.5%から54.0%へと上昇し,成人女子では,50歳以上の中高齢者の占める比率がやや上昇している外は低くなっており,刑法犯に占める少年の比率の高さが目立つ。これを男女別,年齢層別の人口比で見ると,IV-4図に示すとおりである。男女共に少年の増加傾向は見られるが,成人女子は,男子に比べ各年齢層間の差が少ないことが特徴的である。 (2) 罪名別に見た特徴 IV-8表は,平成3年における交通関係業過を除く刑法犯の罪名別検挙人員を,昭和47年及び平成2年と対比して示したものである。女子の罪名は,常に窃盗が首位を占め,3年においても前年と同様,検挙人員の約8割弱を占めており,以下,横領,傷害,詐欺の順となっている。女子比が比較的高いものとしては,窃盗や殺人が挙げられるが,殺人の中でも嬰児殺の女子比は特に高く,何らかの事情で育児に窮した母親が嬰児殺を敢行する例が多いことを示している。一方,3年における男子の罪名を見ると,窃盗が首位を占めることは女子と同様であるが,その比率は52.8%と低く,暴行,傷害,恐喝の粗暴な犯罪が約15%となっている。 なお,女子犯罪の粗暴化傾向も指摘されているが,実数は極めて少なく,平成3年における女子の暴行,傷害及び恐喝を合計して見ても,交通関係業過を除く女子刑法犯総数の4.6%を占めるにすぎない。ただ,3年における罪名別の女子検挙人員に占める少年比を見ると,傷害の80.3%,恐喝の83.4%,暴行の70.0%,強盗の78.2%などとなっており,女子の凶悪・粗暴な犯罪の8割前後は,女子少年によるものである。 IV-3図 交通関係業過を除く刑法犯検挙人員の男女・年齢層別構成比 IV-4図 交通関係業過を除く刑法犯検挙人員の男女・年齢層別人口比 IV-8表 交通関係業過を除く女子刑法犯の罪名別検挙人員 次に,財産犯の中で,量的に最も多い窃盗の手口を見てみる。IV-9表は,昭和47年と平成3年の窃盗の手口別検挙人員の構成比を男女別に示したものである。女子窃盗の手口は,いずれの年も非侵入盗が8割ないし9割を占めているが,男子のそれは昭和47年が50.3%,平成3年が37.1%と低く,侵入盗は,男子の昭和47年が19.7%,平成3年が13.5%であるのに対し,女子は昭和47年が6.0%,平成3年が3.8%と低くなっている。昭和47年と比べると,女子の窃盗に占める万引きの比率(以下「万引率」という。)が80.4%から76.1%へ減少し,乗り物盗の比率が1.4%から14.2%へ増加していることが注目される。これを,年齢層別に見ると,女子少年の万引き率はやや低くなり,代わって乗り物盗の比率が高くなっており,成人女子の万引率は,年齢が上がるにつれて高くなる傾向にある。これらの資料から,女子の刑法犯は,依然として万引きを中心とする窃盗が圧倒的であるが,犯罪者の年齢層が低くなるほど,乗り物盗などの比率が高くなる傾向にあることが分かる。警察庁の調査によれば,平成3年における女子の万引きによる検挙人員は3万3,339人であるが,そのうち,成人女子は1万5,806人(女子万引き者総数の47.4%)で,主婦が7,362人であるから,成人女子の万引きの半数近くは,無職の主婦によるものと推定できる。また,女子少年の乗り物盗,特にオートバイ盗の増加傾向などを見ると,これらの窃盗は,女子少年の行動範囲の拡大,行動様式における男子少年との差の縮小などとも無関係ではないように思われる。IV-9表 窃盗検挙人員の男女・手口・年齢層別構成比 |