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 平成 3年版 犯罪白書 第4編/第5章/第2節/2 

2 保護観察付執行猶予者の特質

(1) 終了調査票による調査から見た特質
 保護観察付執行猶予者について,昭和54年以降における保護観察終了者人員を年齢層別に見たのがIV-75表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-103図である。54年から平成2年にかけて,実人員では,30歳未満及び30代の者が減少傾向にあるのに対し,50代,60歳以主の各年齢層共に増加傾向にあり,これを年齢層別構成比で見ると,40歳以上の中高年齢層で22.7%から34.7%へと12.0ポイント上昇している。これら各年次の保護観察終了者について,終了調査票の調査項目の中から主要なものを取り上げて調査したところ,以下のような特徴が見いだされた。なお,前項において取り上げた実刑歴を有する者及び更生保護会入会者は,該当者が少数であったため,これを取り上げなかった。

IV-75表 保護観察付執行猶予者の保護観察終了時における年齢層別人員

 ア 罪 名
 (ア)窃盗事犯者
 罪名のうち最も多い窃盗(平成2年では保護観察終了者中33.2%)に係る者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-76表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-104図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は21.2%から32.4%へと11.2ポイント上昇している。

IV-76表 保護観察付執行猶予者のうち窃盗事犯者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)

IV-103図 保護観察付執行猶予者の保護観察終了時における年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)

IV-104図 保護観察付執行猶予者のうち窃盗事犯者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)

 (イ)覚せい剤事犯者
 罪名のうち窃盗に次いで多い覚せい剤取締法違反(平成2年では保護観察終了者中18.7%)に係る者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-77表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-105図である。
 年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあるが,仮出獄者の場合(16.9ポイント上昇)ほどではなく,40歳以上の中高年齢層の構成比は23.0%から27.6%へと4.6ポイントの上昇にとどまっている。

IV-77表 保護観察付執行猶予者のうち覚せい剤事犯者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)

 イ属 性
 (ア)暴力組織関係者
 保護観察の開始時点で暴力組織と関係のあった者につし,て,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-78表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-106図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあるが,40歳以上の中高年齢層の構成比は18.4%から21.6%へと3.2ポイントの上昇にとどまっており,仮出獄者の場合(17.2ポイント上昇)ほどには上昇していない。

IV-78表 保護観察付執行猶予者のうち暴力組織関係者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)

IV-105図 保護観察付執行猶予者のうち覚せい剤事犯者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)

IV-106図 保護観察付執行猶予者のうち暴力組織関係者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)

 (イ)無職者
 保護観察の終了時点で無職であった者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-79表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV一107図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代には大きな変化はなく,50代及び60歳以上の各年齢層は共に上昇傾向にあるが,40歳以上の中高年齢層の構成比は27.2%から34.4%へと7.2ポイントの上昇にとどまっており,仮出獄者の場合(20.8ポイント上昇)ほどには上昇していない。
 なお,平成2年における保護観察付執行猶予終了者全員に占める無職者の比率は,22.3%であり,仮出獄者の場合(19.1%)より高く,特に60歳以上の者及び50代の者の無職率は,それぞれ44.7%,25.9%であり,仮出獄者の場合(40.4%,24.0%)より高くなっているが,40代の無職率は17.9%であり,仮出獄者の場合(20.6%)より低い。

IV-79表 保護観察付執行猶予者のうち無職者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)

IV-107図 保護観察付執行猶予者のうち無職者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)

 以上のように,終了調査票による調査によれば,保護観察付執行猶予者は,窃盗事犯者,覚せい剤事犯者,暴力組織関係者及び無職者について,各該当者を同一人が重複する場合も含めた上で年齢層別構成比の推移から見ると,窃盗事犯者については,40歳以上の中高年齢層において仮出獄者の場合と同程度の上昇が見られるが,そのほかの覚せい剤事犯者,暴力組織関係者及び無職者については,いずれも仮出獄者の場合ほどには上昇が認められない。
(2) 保護特別調査から見た特質
 ア生計状況
 IV-80表は,「富裕」,「普通」及び「貧困」に分けた上,調査対象者保護観察終了時点における生計状況を,年齢層別に見たものである。「貧困」の占める比率は,調査対象者総数では28.9%であるが,50代が26.0%,60歳以上が42.4%と,60歳以上の高齢者の方が高くなっている。参考までに,平成2年の保護観察付執行猶予者の新規受理人員について述べると,新規受理人員のうち「貧困」とされる者の比率は23.1%であった。また,調査対象者の生活保護受給率は14.4%(60歳以上の調査対象者の受給率は30.3%)であり,仮出獄者の場合の6.9%に比べると高くなっている。
 イ 居住状況
 IV-81表は,調査対象者の保護観察終了時点における居住状況別構成比を,年齢層別に見たものである。調査対象者総数では,「配偶者と同居」が最も高く,次いで,「単身」,「家族・親族と同居」,「病院入院」,「雇主と同居」,「更生保護会」の順となっている。これらのうち「単身」は60歳以上の高齢者の方が50代の者よりも比率が高く,39.4%にまで達している。

IV-80表 保護観察付執行猶予者の年齢層・生計状況別構成比

IV-81表 保護観察付執行猶予者の年齢層・居住状況別構成比