(1) 終了調査票による調査から見た特質
仮出獄者について,昭和54年以降の保護観察終了者の年齢層別人員を見たのがIV-66表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-96図である。
54年から平成2年にかけて,実人員では,30歳未満及び30代の者が起伏はあるものの減少傾向にあるのに対し,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に増加傾向にあり,これを年齢層別構成比で見ると,40歳以上の中高年齢層は31.2%から47.3%へと16.1ポイント上昇している。これら各年次の保護観察終了者について,終了調査票の調査項目の中から主要なものを取り上げて調査したところ,以下のような特徴が見いだされた。
IV-96図 仮出獄者の保護観察終了時における年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
ア罪 名
(ア)窃盗事犯者
罪名のうち最も多い窃盗(平成2年では保護観察終了者中30.1%)に係る者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-67表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-97図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は33.1%から46.8%へと13.7ポイント上昇している。
IV-67表 仮出獄者のうち窃盗事犯者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)
(イ)覚せい剤事犯者
罪名のうち窃盗に次いで多い覚せい剤取締法違反(平成2年では保護観察終了者中29.7%)に係る者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-68表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-98図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は31.0%から47.9%へと16.9ポイント上昇しており,窃盗事犯者の場合のそれよりも上昇の程度が大きい。
IV-68表 仮出獄者のうち覚せい剤事犯者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)
IV-97図 仮出獄者のうち窃盗事犯者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
IV-98図 仮出獄者のうち覚せい剤事犯者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
イ属 性
(ア)実刑歴を有する者
保護観察の開始時点で当該仮出獄に係る刑以外の実刑処分歴を有する者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-69表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-99図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は43.4%から58.4%へと15.0ポイント上昇しており,実刑歴を有する者の中での中高年齢層構成比は高く,昭和59年に5割を超えて更に上昇を続けている。
IV-69表 仮出獄者のうち実刑処分歴を有する者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)
(イ)暴力組織関係者
保護観察の開始時点で暴力組織と関係のあった者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-70表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-100図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にがけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は21.7%から38.9%へと17.2ポイント上昇しているが,2年における暴力組織関係者の中高年齢層構成比は,実刑歴を有する者のそれに比べると,かなり低い。
IV-70表 仮出獄者のうち暴力組織関係者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)
IV-99図 仮出獄者のうち実刑処分歴を有する者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
IV-100図 仮出獄者のうち暴力組織関係者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
(ウ)無職者
保護観察の終了時点で無職であった者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-71表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-101図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は,36.1%から56.9%へと20.8ポイント上昇しており,特に昭和62年以降の上昇が急である。
なお,平成2年における仮出獄保護観察終了者全員に占める無職者の比率は19.1%であるが,これを年齢層別に見ると,60歳以上が40.4%,50代が24.0%,40代が20.6%と,いずれも全体の比率を上回っており,特に60歳以上の者の比率が高い。
IV-71表 仮出獄者のうち無職者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)
(エ)更生保護会入会者
保護観察期間中に更生保護会に入会した者について,昭和54年以降の年齢層別人員を見たのがIV-72表であり,これを年齢層別構成比で示したのがIV-102図である。年齢層別構成比では,54年から平成2年にかけて,40代,50代,60歳以上の各年齢層共に上昇傾向にあり,40歳以上の中高年齢層の構成比は47.5%から64.9%へと17.4ポイント上昇している。
以上のように,終了調査票による調査によれば,仮出獄者は,窃盗事犯者,覚せい剤事犯者,実刑歴を有する者,暴力組織関係者,無職者及び更生保護会入会者について,各該当者を同一人が重複する場合を含めた上で年齢層別構成比の推移から見ると,いずれも40歳以上の中高年齢層において上昇傾向が認められる。
IV-72表 仮出獄者のうち更生保護会入会者の年齢層別人員(昭和54年〜平成2年)
IV-101図 仮出獄者のうち無職者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
IV-102図 仮出獄者のうち更生保護会入会者の年齢層別構成比(昭和54年〜平成2年)
(2) 保護特別調査から見た特質
ア 生計状況
IV-73表は,調査対象者の保護観察終了時点における生計状況を,「富裕」,「普通」及び「貧困」に分けた上,年齢層別に見たものである。「貧困」の占める比率は,調査対象者総数では41.2%であるが,50代が40.9%,60歳以上が42.5%と,60歳以上の高齢者の方が高くなっている。仮出獄者の保護観察終了者全員についての「貧困」の占める比率は,資料上の制約から明らかでないので,参考までに,平成2年の仮出獄者の新規受理人員について述べると,新規受理人員に占める「貧困」とされる者の比率は35.6%であった。また,調査対象者のうち生活保護を受けている者の比率(以下,本節において「受給率」という。)(靜.9%(60歳以上の調査対象者の受給率は8.8%)となっており,これは,一般国民の受給率(厚生省社会局「生活保護速報」によれば,元年における平均保護率は0.89%)に比べるとかなり高くなっている。
IV-73表 仮出獄者の年齢層・生計状況別構成比
IV-74表 仮出獄者の年齢層・居住状況別構成比
イ居住状況
調査対象者の保護観察終了時点における居住状況別構成比を,年齢層別に見たのがIV-74表である。調査対象者総数では,「配偶者と同居」が最も高く,次いで,「更生保護会」,「家族・親族と同居」,「単身」,「雇主と同居」,「病院入院」の順となっている。これらのうち「更生保護会」,「単身」,「雇主と同居」及び「病院入院」は,それぞれ60歳以上の高齢者の方が50代の者よりも比率が高くなっており,特に「更生保護会」が33.6%にまで達していることが注目される。