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 平成 3年版 犯罪白書 第4編/第4章/第5節/3 

3 要約と課題

 前述のとおり,60歳以上の高齢出所者のうち収容分類級Pz級の者,累進処遇除外者及び不就業者等の構成比がそれぞれ極めて低いことから,大多数の高齢受刑者は,賦課された作業に従事し,かつ,教育行事等に出席するなど,他の年齢層の受刑者とともに矯正処遇を受けていることが認められる。
 もちろん高齢受刑者の生活指導,作業指導,健康管理,保護関係の調整などについては,職員の懇切できめの細かい指導が必要であり,近年,高齢受刑者が増えて,処遇集団を形成するまとまった人員となるにつれて,高齢受刑者の処遇に関する規程を作成する行刑施設が次第に増えている。高齢受刑者の処遇上考慮すべき事項は少なくないが,特に重要であるのは彼らの健康管理である。

IV-48表 高齢出所者等の出所事由別構成比(平成2年)

IV-49表 高齢出所者等の出所時帰住先別構成比(平成2年)

 矯正統計年報によると,休養患者すなわち医師の診療を受けた被収容者のうち医療上の必要により病室又はこれに代わる居室に収容されて治療を受けた者の状況は,IV-50表のとおりである。60歳以上の高齢受刑者について,昭和52年と平成2年を対比すると,休養患者の実数は1.9倍になっており,病名別では,「呼吸器系」及び「消化器系」の休養患者の構成比が上昇し,「循環器系」のそれは低下している。
 今後,60歳以上の休養患者の増加に備え,医療体制の一層の整備充実が必要である。現在でも,定期的に健康診断を行い,成人病の予防を図り,疾病の早期発見・早期治療に努めているが,なお一層医療上の人的・物的条件を整え,高齢受刑者の健康管理の万全を期する必要がある。また,60歳以上の高齢受刑者に適した運動やクラブ活動の実施等により高齢受刑者の体力の維持・増進を図るとともに,高齢受刑者にふさわしいより良い作業環境を整え,彼らの体力に応じた適当な作業の賦課に引き続き尽力することも肝要である。高齢受刑者といえども,能力がある限り適宜の作業に従事し,集団処遇にも参加することが老化防止に寄与するものであることは,一般的に認められている。
 保護関係については,60歳以上の高齢受刑者の増加に伴い,ますます調整困難な場合が多くなることが考えられる。更生保護会を帰住先とする60歳以上の高齢出所者は,昭和52年には203人,平成2年には321人で1.6倍となっている。更生保護会への帰住は,多くの場合就労を基本としているだけに,健康上の理由等で就労困難な高齢受刑者の帰住先開拓については多角的な努力が必要であり,今後,医療や生活保護を必要とする高齢出所者等について,福祉機関との連携が更に重要となっていくであろう。

IV-50表 休養患者数(昭和52年,57年,62年,平成2年)