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2 高齢出所者の概況 高齢受刑者の全国的な処遇状況を知るために,受刑者出所調査票に基づいて出所受刑者の状況を調査し,そのうち特に60歳以上の高齢出所者を取り出して考察することとした。IV-41表は,昭和52年,57年,62年及び平成2年の出所受刑者の総数と,そのうち60歳以上の高齢出所者及び高齢出所者に準ずる者と考えられる50代の出所受刑者の人員の推移を,初入・再大別に見たものである。高齢出所者が漸増していることが分かる。
IV-41表 高齢出所者等の人員 (昭和52年,57年,62年,平成2年) 以下,主として平成2年の60歳以上の高齢出所者について述べるとともに,適宜,昭和52年と平成2年の高齢出所者を対比することとする。(1) 受刑在所期間 平成2年の高齢出所者等の受刑在所期間は,IV-42表のとおりであり,初入者,再入者共に,1年を超え2年以下の者の構成比が最も高い。 (2) 収容分類級 平成2年における高齢出所者等の出所時の収容分類級は,IV-43表のとおりである(収容分類級についてはII-4図参照)。受刑者分類規程において,収容分類級のP級はPx級,Py級及びPz級に分けられ,Px級とは「身体上の疾患又は妊娠若しくは出産のため,相当期間の医療又は養護の必要のある者」,Py級とは「身体障害のため特別な処遇を必要と認められる者及び盲ろうあ者」,Pz級とは「年齢がおおむね60歳以上で老衰現象が相当程度認められる者及び身体虚弱のため特別な処遇を必要と認められる者」とされているが,2年の60歳以上の高齢出所者では,Px級は4.1%(44人),Pz級は3.3%(35人)であり,Py級はいない。 IV-42表 高齢出所者等の受刑在所期間別構成比(平成2年) IV-44表は,昭和52年,57年,62年及び平成2年のPx級,Py級及びPz級の高齢出所者等を見たものである。60歳以上の高齢出所者の総数は増えているが,P級の高齢出所者の構成比は低下している。(3) 処遇分類級 平成2年における高齢出所者等の出所時の処遇分類級は,IV-45表のとおりである(処遇分類級については,II-4図参照)。受刑者分類規程において,処遇分類級のT級とは「専門的治療処遇を必要とする者」,S級とは「特別な養護的処遇を必要とする者」とされているが,2年の60歳以上の高齢出所者,では,T級は4.7%(50人),S級は16.0%(171人)である。2年のS級の出所受刑者総数は716人であるが,そのうち60歳以上の高齢出所者が23.9%を占めている。 IV-43表 高齢出所者等の出所時収容分類級別構成比(平成2年) IV-44表 出所時収容分類級がP級である者の構成比(昭和52年,57年,62年,平成2年) (4) 出所時処遇階級累進処遇制度は,刑の執行の過程に4個の階級を設け,入所当初の最下級(4級)から,その行刑成績に応じて順次上級に進級させる処遇方法である(第2編第3章第3節1(2)参照)が,IV-72図は,60歳以上の高齢出所者の出所時処遇階級を見たものである。平成2年には,1級は5.2%(56人),2級は48.2%(517人)で,1級と2級を合わせると過半数となる。なお,[1]刑期6月未満の者,[2]65歳以上であって立業に堪えられない者,[3]妊産婦,及び[4]心身の障害により作業に適しない者は,累進処遇から除外されるが,同年の累進処遇除外者は122人・11.4%である。このうち刑期6月未満の懲役受刑者は約60人であり,その残りの相当部分が65歳以上で立業に堪えられない者として除外されたことになる。 IV-45表 高齢出所者等の出所時処遇分類級別構成比(平成2年) (5) 刑務作業ア作業の種類 IV-73図は,高齢出所者等に賦課された作業中,就業者の多い4種の作業につき,就業者の増減を見たものである。平成2年における60歳以上の高齢出所者について見ると,就業者総数に占める構成比は,「紙細工」が24.8%(266人)で約4分の1を占め,「金属加工・機械組立修理」が12.9%(138人)である。この両者について昭和52年と平成2年を対比すると,「紙細工」は34.1%から24.8%へと低下し,「金属加工・機械組立修理」は4.8%から12.9%へと上昇している。なお,2年において「不就業」は1.2%(13人)である。 IV-72図 高齢出所者の出所時処遇階級別構成比の推移(昭和52年,57年,62年,平成2年) IV-73図 高齢出所者等の作業名別構成比の推移(昭和52年,57年,62年,平成2年) イ 作業賞与金給与額平成2年における60歳以上の高齢出所者に給与された作業賞与金の額は,「5,000円以下」が11.1%(119人),「5,000円を超え1万円以下」が12.0%(129人),「1万円を超え2万円以下」が18.6%(199人),「2万円を超え3万円以下」が13.1%(140人),「3万円を超え5万円以下」が15.8%(169人),「5万円を超える」が28.3%(303人)であり,残りの1.2%(13人)は給与額「なし」である。 ウ職業訓練 IV-46表は,昭和52年から平成2年までの出所受刑者の中で,職業訓練を修了した者の人員を見たものである。2年の修了者の種目とその人員は,60歳以上の高齢出所者では,「製版・印刷」1人,「木材工芸」1人,「その他」1人である。なお,50代の出所受刑者では,「溶接」8人,「木材工芸」8人,「自動車運転」5人,「左官」4人などである。 次に,昭和52年から平成2年までの資格・免許の取得状況は,IV-47表のとおりである。2年における60歳以上の高齢出所者では,「簿記検定」1人,「ボイラー技士」1人であり,50代の出所受刑者では,「ボイラー技士」4人,「木工塗装工」3人,「アセチレン溶接工」3人などである。 IV-46表 高齢出所者等の職業訓練修了者数 (昭和52年〜平成2年) IV-47表 高齢出所者等の資格・免許取得者数 (昭和52年〜平成2年) (6) 懲罰回数IV-74図は,60歳以上の高齢出所者の懲罰回数を見たものである。平成2年において,懲罰回数が「なし」は65.6%(703人)であり,これを初入・再入別に見ると,初入者は84.4%(173人),再入者は61.1%(530人)である。懲罰回数について昭和52年と平成2年を対比してみると,懲罰回数が「なし」は81.8%から65.6%へと低下し,一方,15回以上」は1.0%から3.7%へと上昇している。 IV-74図 高齢出所者の懲罰回数別構成比の推移(昭和52年,57年,62年,平成2年) (7) 出所事由平成2年における60歳以上の高齢出所者の出所事由は,IV-48表のとおりであり,満期釈放57.4%(615人),仮釈放42.6%(457人)である。仮釈放者を初入・再入別に見ると,初入者は76.1%(156人),再入者は34.7%(301人)である。 (8) 出所時の帰住先 IV-49表は,出所時の帰住先を見たものである。平成2年における60歳以上の高齢出所者のうち帰住先が更生保護会である者は29.9%(321人)であり,これを初入・再入別に見ると,初入者は17.1%(35人),再入者は33.0%(286人)である。 |