第5節 高齢受刑者の矯正処遇
1 高齢受刑者の処遇 我が国では,60歳以上の高齢受刑者を収容する施設は特に指定されておらず,高齢受刑者は,その収容分類級に従って各行刑施設に分散収容されている。しかし,高齢化の波が行刑施設にも及び,矯正処遇上特に留意を要する60歳以上の高齢受刑者が次第にその数を増していることから,多数の高齢受刑者を収容する行刑施設の中には,高齢受刑者用の特設工場や居室を設けているところがある。 高齢受刑者については,各施設ごとにその高齢受刑者の特性に応じた配慮がなされているが,その一例として示すと,[1]作業時間を一般受刑者の8時間から6時間に短縮する,[2]「紙細工」など軽作業を課する,[3]保温のために衣類・寝具を増貸与し,湯たんぽや補正器具(眼鏡,補聴器など)を貸与する,[4]定期的に健康診断を行い,血圧,尿,体温,脈拍などを調べる,[5]ゲートボール,ベビーテニス,輪投げなど高齢者向けの運動をさせる,[6]居室でのテレビ視聴,映画・演芸等の慰問行事の機会を特に多く設ける,[7]身元引受人を確保するための保護調整に努める,などが挙げられる。 上記に例示した配慮事項とは別に,高齢受刑者の健康管理の重要性にかんがみ,年齢上及び収容期間上一定の要件を満たす者について胃検診を行っており,また,高血圧症,動脈硬化症,糖尿病等のいわゆる成人病の早期発見に努めるとともに,発見後の医療措置の万全を期している。
|