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 平成 3年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/3 

3 高齢受刑者の特質

 調査対象者のうち,60歳以上の受刑者は,初入者68人,再入者114人,総数182人である。特に高齢受刑者について,初入・再入別にその特質を見たのがIV-33表であり,主要な調査項目の調査結果から,構成比の高い順に第1位から第3位までの回答選択肢を取り出して列記しててある。
 以下,IV-33表に基づいて高齢受刑者の特質について述べる。
[1] 主な罪名を見ると,60歳以上の高齢初入者は,殺人(19.1%);詐欺(16.2%),道路交通法違反(11.8%)の順であるが,高齢再入者は,窃盗(48.2%)が第1位で,次が覚せい剤取締法違反(16.7%)である。
[2] 刑期は,60歳以上の高齢初入者,高齢再入者共に,「2年を超え3年以下」,「1年6月を超え2年以下」,「1年を超え1年6月以下」の順であるが,5年を超える者が高齢初入者では11.8%もいるのに対し,高齢再入者では1.8%にすぎない。
[3] 犯行の動機は,60歳以上の高齢初入者,高齢再入者共に,「利欲」が第1位であるが,次に,高齢初入者では「激情」(16.2%),高齢再入者では「生活苦」(24.6%)が続いている。
[4]初発被検挙年齢を見ると,60歳以上の高齢初入者は,55歳以上が58.8%を占めるのに対し,高齢再入者は,30歳未満が78.1%に及んでいる。
[5] アルコール依存,ギャンブル癖及び覚せい剤依存については,それぞれ60歳以上の高齢再入者よりも高齢初入者の方が「なし」の構成比が高い。
[6] 入所前の家庭状況は,60歳以上の高齢初入者では「妻(夫)子と同居」(61.8%)が,高齢再入者では「単身・住所不定」(45.6%)が,それぞれ第1位である。
[7]配偶者の有無については,60歳以上の高齢初入者は「あり・同居」(54.4%)が,高齢再入者は「なし・離別」(40.4%)が,それぞれ第1位である。
[8] 家族との関係は,60歳以上の高齢初入者では「まずまずうまくいっている」(38.2%),高齢再入者では「家族から既に見放されている」(30.7%)が,それぞれ第1位であり,高齢再入者の場合,「天涯孤独」が16.7%となっている。
[9] 教育程度は,60歳以上の高齢初入者,高齢再入者共に,「中学卒業」,「義務教育未修了」,「高校卒業」の順である。
[10] 帰住先は,60歳以上の高齢初入者では「配偶者」(45.6%),高齢再入者では「更生保護会」(47.4%)の構成比が最も高い。

IV-33表 高齢受刑者の初入・再入別の特質