覚せい剤取締法違反の法定刑の種類は,無期懲役又は有期懲役若しくは罰金であるが,近年では,同法違反事件を起訴する場合,略式命令請求する例は皆無に近くなっており,ほとんど全件公判請求している。
IV-18表は,昭和50年以降の同法違反の起訴人員及び起訴猶予人員等を年齢層別に見たものであり,IV-32図は,そのうもの起訴人員の年齢層別構成比を,また,IV-33図は,年齢層別公訴提起率を見たものである。起訴人員に占める40歳以上の中高年齢層の者の割合が急速に増加していること及び公訴提起率は極めて高く,かつ,年齢層別に見てもほとんど差がないことが分かる。
IV-17表 殺人の実刑・執行猶予判決別,年齢層別人員及び刑期合計[1] 実刑判決 (昭和55年〜平成元年)
IV-30図 殺人実刑判決における人員及び刑期合計の年齢層別構成比比較(昭和55年〜平成元年)
IV-18表 覚せい剤取締法違反の年齢層別,起訴・起訴猶予別人員(昭和50年,55年,60年〜平成2年)
IV-31図 殺人執行猶予判決における人員及び刑期合計の年齢層別構成比比較(昭和55年〜平成元年)
IV-32図 覚せい剤取締法違反の起訴人員年齢層別構成比(昭和50年〜平成2年)
IV-19表は,最高裁判所の資料により,昭和55年から10年間に,地方裁判所において覚せい剤取締法違反により有期懲役刑の判決を受けた者について,実刑判決・執行猶予判決別,年齢層別に,人員と刑期合計とを見たもの,IV-34図は,同表から,実刑率を算出し,実刑前科者率と対比して見たもの,さらに,IV-35図は,同表から,実刑判決について,年齢層別人員構成比及び年齢層別刑期合計構成比を算出し対比して見たものである。これらの図表から,[1]起訴人員中,40歳以上の中高年齢層の者の実刑前科者率が他の年齢層のそれよりも高く,しかも年々上昇傾向にあり;それに伴い,中高年齢層の者の実刑率も高く,しかも特に最近,50代及び60歳以上の年齢層の者の実刑率が高くなっていること,及び[2]実刑判決人員においては,中高年齢層の者の構成比が55年の27.8%から平成元年の43.5%まで,年々上昇している上,刑期合計においては,同年齢層の者の構成比は,昭和55年の30.8%から平成元年の47.1%まで,わずかではあるが人員の構成比より高い数値で推移しながら上昇しているので,覚せい剤取締法違反に関しては,中高年齢層の者は,より若い年齢層の者より,相対的にやや犯罪性が高いということが分かる。
IV-33図 覚せい剤取締法違反の年齢層別公訴提起率(昭和50年〜平成2年)
IV-19表 覚せい剤取締法違反の実刑・執行猶予判決別,年齢層別人員及び刑期合計[1] 実刑判決 (昭和55年〜平成元年)
IV-34図 覚せい剤取締法違反の有罪人員実刑率及び起訴人員実刑前科者率(昭和55年〜平成元年)
IV-35図 覚せい剤取締法違反実刑判決における人員及び刑期合計の年齢層別構成比比較(昭和55年〜平成元年)